ツユモシラズ

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【さよならごつこ】杜野凛世の「510」の謎を追いかけて死んだオタクの遺書

 今日も今日とて生きております。

 ツユモです。

 

 突然ですが皆さんには、悩みってございますでしょうか?

 かつて「ノーテンキの擬人化」とも呼ばれたことのあるこの私めにも、最近考え出すと夜も寝られなくなる悩みが出来てしまいました。

 

 どこからどう話し始めるべきか難しいため、まずは大前提から。

 つい先日、私の“人生のバイブル”、いや、“アナザースカイ” とも言うべきアイドルマスターシャイニーカラーズ』(通称シャニマス)というアイドル育成ゲームにて、PSSR「【さよならごつこ】杜野凛世」が新しく実装されたのは周知の事実かと存じます。

 年の瀬に事務所を遠く離れ、実家である鳥取県へと帰省した凛世さんが、離れ離れのプロデューサーへの想いを募らせていく愛らしい様子が描かれた、最高のコミュでしたね…

 

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▲目が保養されすぎてヤバい

 

 そんな【さよならごつこ】ですが、今回私の頭を悩ませる原因となったのは、ストーリーではなく「思い出アピール」というスキル名称です。

 いろいろと細かい説明はすっ飛ばしますが、ゲーム内でプロデュースできるアイドルには、フェス中に効果を発揮する「思い出アピール」という必殺技のようなものが備わっており、キャラクターを育成し、思い出レベルを最大まで上げることによって、このスキル名称が変化するちょっとした楽しみがついております。

 

 例えば、【BON・BON・DAY】大崎甜花というアイドルの場合、思い出レベルLv.1~Lv.4まで「YELL」というスキル名称がつけられています。

 

▲画像右が「思い出アピール」の名称

 

 思い出アピール名は、たいていコミュの内容と密接に関連した言葉となっており、こちらの例では、いつもファンの皆やプロデューサーに支えてもらってばかりいることに改めて気づいた甜花ちゃんが、自分からも何かお返ししたい(=「YELL」を送りたい)という想いが芽生え始める成長描写とリンクしたワードになっています。

 そして最大であるLv.MAXになると、このスキル名称の冒頭に「しょこらてぃ」が付き、先程の「YELL」と繋がることで「[しょこらてぃ]YELL」(=Chocolatier:フランス語でチョコレート専門の菓子職人の意)として、今度はコミュの山場である、プロデューサーのために甜花ちゃんがバレンタインチョコを手作りする場面を彷彿とさせるワードになる、という小粋な仕掛けが施されています。

 「しょこらてぃ」が平仮名なのが甜花ちゃんらしくて「かわいー☆」ですね…

 

 

 さて、ここからが本題なのですが…

 今回の【さよならごつこ】における思い出アピールを確認してみると、Lv.1~Lv.4までは「ひかりさす」という名称が付けられています。

 

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 もちろん、これは3番目のコミュ『遠きにて』において、事務所から遠く離れた鳥取の神社から凛世さんが電話をかけたことによって、プロデューサーのスマートフォンの画面が灯り、さらに想い人であるプロデューサーとの通話が繋がったことで凛世さんの表情がパッと明るくなった情景を想起させるワードです。

 

 また、より詩的に解釈すれば、通話を通して遠く離れた地にいる二人の心が通じ合い、互いの心に光が差し込んだことを表すようでもあります。(通話する直前に事務所の電球が切れてしまい、コンビニまで買いに行くという描写があるのも非常に文学的ですね)

 

 そしてLv.MAXになると、この「ひかりさす」という言葉の冒頭に「510」という数字が付きます。

 

 

ふーん、なるほど。「510」ね……

 

 

 

 

510かあ…

 

 

 

 

 

510……

 

 

 

 

 

 

 

 

……いや、510ってなに!?!?

 

 

 

 

 マジでこうなったわけです。

 

 もちろん今回のコミュはおろか、これまでの凛世コミュにおいて「510」などという数字は、一切登場していない初見の文字列です。

 

 一応、今回のコミュの中で「10回通話音が鳴ってもプロデューサーが気づかなければ、諦めて電話を切る」と凛世さんが決意する場面はあるのですが、特に「5回目」が強調されていたような描写は無く、「510」との関連性を指摘するのはかなり厳しいものがあります。

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 かといってほかに印象的な数字が出てきたような場面も無いので、「510」の意味は全く思い浮かびません。

 

 

パッと思い浮かばないなら、これまでのシャニマス知識を総動員して、自らの頭で考察するまでだ!!!

 

 

 

 

思考を止めるな!

 

 

 

うおおおおおおお!!!

 

 

 

と、三日三晩無い頭を振り絞って考えてみたのですが、

・実はプロデューサーの苗字が「後藤=510」だったのでは?

・制作陣がわれわれ考察好きのオタクを苦しめるためになんの意味もない数字を入れただけの罠なのでは?

とか根も葉もない考えばかり浮かんできてしまう始末。

 

まあ結論、私の脳みそでは

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となってしまったので、ここは大人しくインターネットの集合知に頼り、ググってみることにしました。

 全世界10億人のシャニマス有識者怪文書おじさんたちなら、きっと正解にたどり着いているはずです。

 

 で、出てきた仮説を2つほどご紹介いたします。

 いちおう先日書いた感想記事の中でも少し触れているので繰り返しになってしまうのですが、さらっと振り返ってみましょう。

 

▼先日描いた感想記事

shirazu41.hatenablog.com

 

第1の仮説:新幹線説

 まずヒットしたのが、「ひかりさす」と「510」の文字の並びから、新幹線の「ひかり510号」を意味しているのではないか、という説です。

 杜野凛世さんが今回コミュの中で帰省した「里」とは鳥取県に位置しているため、岡山駅~東京駅を繋ぐ東海道・山陽新幹線 ひかり510号 を東京に帰る際に利用したという推察は、地理的にみても確かに一理あります。(こういう界隈にあまり明るくないので、全然違ってたらスミマセン…)

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▲出身地:鳥取県

 実際、TRUE END『我に帰れ』を見ると、新幹線に乗って東京へと戻るまでの情景が、凛世さんの視点から生き生きと描き出されています。

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 ただ、この仮説を見たとき率直に思ったのが、

 

 

あんまロマンチックじゃないな……

 

 

でした。

 

 この新幹線が、遠く離れた場所にいた凛世さんとプロデューサーを最後に引き合わせた乗り物という、そこそこ重要な意味を持っていることはわかります。

 しかし、それにしたってこんな美しい恋を描くライター(一説には、次期ノーベル文学賞の有力候補とも言われている)が、新幹線の号名を思い出アピールのLv.MAXに持ってくるだろうか…? という疑念は収まりません。

 

 例えば、前回のPSSR【ロー・ポジション】では、Lv.1~Lv.4まで「映るもの」という名称だったものが、Lv.MAXでは「[映すもの]映るもの」に変化します。

 

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 これは、「映るもの」という一方的に視覚の客体になる存在のみに着目した表現が、「[映すもの]映るもの」という双方向的な表現に変わることによって、プロデューサーと凛世さんの心が通い、単なる職業的関係を超えた、一組の人間としての対等な関係へと変化する様を暗に示しているのではないかと思われます。

 

 今回の場合ですと、Lv.1~Lv.4までの「ひかりさす」というどエモい名称が、Lv.MAXで「510」が付け足されることで、「ひかり510号」という大衆的で無機質な交通機関名に置き換わってしまっており、むしろ格落ち感を感じてしまう部分もあります……。(単純に好みの問題かもしれませんが…)

 

 何かもうちょっと浪漫あふれる仮説は無いだろうか、と思ってネットの海を放浪し、見つけたのが次の仮説です。

 

第2の仮説:日数説

 凛世さん5枚目のPSSRである【われにかへれ】が実装された日から起算して、【さよならごつこ】リリースまでの「約510日」から引用したのではないか、という説です。

 発見した時、一番「はえ~!」となりました。これに気づいた人凄すぎですね…。

 

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 実際、【われにかへれ】がリリースされたのは、2020年8月11日であり、2022年1月3日までの日数を計算してみると「510日」となります。

 

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 そして、以前書いた感想記事の中でも言及しておりますが、【さよならごつこ】のTRUE END名が「我に帰れ」であることや、コミュ内の要素にも共通点が多いことから、【われにかへれ】からカウントした日数である「510」とするのは、かなり説得力があります。

 

 ただ、一つだけどうしても気になってしまうのは「1月3日」を基準にしていること。

 ご存知の通り、今回の【さよならごつこ】は2022年1月1日の年明けと同時に実装されたものになるので、約2日のズレが生じています。

 

 作中で凛世さんが帰省を終え、東京に戻った日付を「1月3日」と仮定すれば、不自然ではないといえばそうなのですが、コミュの中で明確にこの日付が出てくる(もしくは3日だと推理できる)描写は残念ながらありません。

 また、コミュの中で「ひかりさす」瞬間といえば、やはり12月31日深夜に電話が繋がったあのムービーの場面ですので、東京に戻ってきた日をピックアップするのも個人的には少しだけ違和感があります。

 

 

うーん、モヤモヤするぜ……

 

 

などと言っているうちに、とあるまとめサイト内にて、少々気になるコメントを発見いたしました。

 

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 なるほど、確かに今回のガシャ画面では「━━━ 遠いな、な、な」というセリフが使われているなど、【さよならごつこ】では「遠さ」が大きなテーマの一つとして出てきているため、「510」が距離を示した言葉という可能性は十分に考えられます。

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 ただコメント欄内でも指摘の入っている通り、東京も鳥取も東西に広い形状をしており、その距離が大体「510km」などと言ってみたところで説得力はありません。

 

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 自分でも実際に調べてみたのですが、鳥取県最西端から東京都最北端までの距離が約615km、鳥取県最東端から東京都最西端までの距離が約420kmと、かなり幅があります。

 

 

 

 

じゃあこの説もダメかあ~

 

 

 

おおよそ510とかテキトーすぎるもんなあ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ん?

 

 

 

……待てよ、「おおよそ」じゃなければいいのでは?

 

 

 

 「アイドルマスターシャイニーカラーズ」において登場する背景の多くが「東京都聖蹟桜ヶ丘駅周辺」をモデルにしていることはもはや赤ん坊でも知っている事実……。

 

hahaeatora.hateblo.jp

baki1771104.com

 

 すでに素晴らしき先人たちによって、数々の検証ブログの執筆や、聖地巡礼なども行われています。

 

 ということはつまり、聖蹟桜ヶ丘から、あの日凛世さんのいた神社までの距離が正確に「510km」だったと証明できれば、この「510=距離説」を立証できるのでは?

 

 

 そしてさらに言えば、

 

 聖蹟桜ヶ丘から510kmの位置にある鳥取県内の神社を割り出すことができれば、逆説的にそこが杜野凛世さんがあの日存在した神社ということにならないだろうか!?!?

 

 

 

 ここまで思考が辿りついてしまったオタクを止めることなど、もはや誰にも出来ません。 

 

 まずは、鳥取県内のすべての神社を洗い出します。

 

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▲Yahoo地図検索より。※青丸一つひとつが神社

 

 あとは片っ端からシャニマスの舞台である聖蹟桜ヶ丘までの直線距離を調べるだけです。

 

 

 

 すると、最も近かったものとして、鳥取県倉吉市に存在する「賀茂神社」が候補にあがりました。

 

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▲動点Pとの距離を求めよ

 

・・・「509」km…

 

 

惜しい、惜しすぎる…

 

 

たった1kmではあるが、これでは凛世さんがこの場所にいたという絶対的な証拠にはならない…!!

 

 

 

 

510」じゃなければ意味がないのだ……!!!

 

 

 

いや、思い出せ… 何かを見落としているはずだ……

 

そういえば電話をかけたとき、正確には凛世さんは神社から少し外れた場所に移動していたはず…

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▲姉の呼び止める声を振り切りんぜ

 つまり、凛世さんがプロデューサーに電話をかける際、超スピードで神社から1km離れた場所まで移動していたとすれば、辻褄は合うか…?

 

 いや、流石に電話をかけるだけのために、晴れ着姿で1kmも移動するなんて現実的じゃなさすぎるか…… せめてもう少し動きやすい格好であれば…

 

 

 

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©︎なな(@Schoolswimwear)さん

 

 

 

あっそうか…!

 

 

 

 

プロデューサーの位置だ…

 

 

 

 

 ずっと「聖蹟桜ヶ丘」という情報を重視しすぎて、プロデューサー側の所在地を「聖蹟桜ヶ丘駅」として調査していたのですが、もう少し正確に割り出してみます。

 

 

 電話がかかってくる直前、大晦日の深夜23時を超えていたはずですが、「ええと、LED……E……26…… ━━━━こんなタイミングで切れるんだもんなぁ」という台詞から、プロデューサーは事務所に残って業務をしていたことが明らかです。(さすがミスター・馬車馬…

 

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 さらにその後の描写を見るに、コンビニで替えの電球を購入し、戻ってくる最中に例の電話がかかってきたということが読み取れます。

 業務中に突然切れた電球を買うためだけにわざわざ離れたコンビニまで行くとは考えづらいですし、既に用事を終えて事務所に帰る途中だったことを考えると、このときプロデューサーが事務所から程近い場所にいたと仮定するのは不自然ではないでしょう。

 

 

つまり、真に求めるべきは「聖蹟桜ヶ丘駅からの距離」ではなく、「283プロダクションからの距離」なんだッ!!

 

 

 ここまで来れば、あとはデイリーミッションより簡単。

 283プロダクション事務所のモデルとなったであろうビルなど、既に多くの偉大なる調査隊が特定済みです。

 

note.com

 

 なるほど、「桜ヶ丘中央ストアー」が最有力候補というわけですね……。

 

 

 では、改めて先ほどの「賀茂神社」から「桜ヶ丘中央ストアー」までの距離を計算してみると…

 

 

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▲510!!

 

 

 

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━━━━ そうだ、あの日。

 

 この場所で… この「賀茂神社」で、杜野凛世さんは、姉夫婦とともに初詣に赴き、プロデューサーと運命の電話を交わしたんだ…(涙が溢れて止まらない音)

 

 

※こちらの神社がモデルというのは、公式見解ではありません。

 くれぐれも神社の方・近隣住民の方のご迷惑となる行為はお控えください。

 

 ちなみにこちらの賀茂神社ですが、調べてみたところ鳥取県中部では有名な神社で、初詣の時期には多くの参拝客が訪れ賑わうそうです。まさに【さよならごつこ】のシチュエーションにぴったりですね。

 

 御祭神である賀茂別雷命は、災い除けにご利益のある神様とのことで、2021クリスマスコミュでの「プロデューサーさまに……悪いものが……寄りませんように……」の台詞ともリンクしており、凛世さんはこのご利益を知っていたからこそ、この神社に行きたいと言ったのかもしれませんね。

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▲ぼんやりんぜ

 

 そしてさらに調べてみると、こちらの神社には「天女伝説」なるものが残っているそうです。

 伝説によれば、かつて天女がこちらの賀茂神社の鳥居のそばに生えた夕顔をつたって天に昇ったとのことですが、改めて今回のフェス衣装を見ると、まさにその天女を彷彿とさせる羽衣のような衣装を纏っていますね…!

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ふつくしい

 

 いやー、ここまで来れば「510」とは「コミュ内で電話をかけた時点における、杜野凛世さんとプロデューサーの距離」を表した数字と言い切っても問題ないでしょう!

 

 一度は迷宮入りかと思われた「510」の謎ですが、かなり自分の中では納得度の高い結論に辿り着けて良かったです!

 ここまで長々とお付き合いいただき、ありがとうございました!!

 凛世さんとプロデューサーの末永き幸せを願って、この記事を締めたいと思います!!!

 

 

 

 

 

 あ、せっかくだから最後に、伝説の中で天女が昇ったとされる夕顔の花言葉でも調べてみるか…

 

 

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う…

 

 

 

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【さよならごつこ】杜野凛世についての感想と考察と怪文書

はじめに

 みなさま、お久しぶりです。

 ツユモです。座右の銘は「他人に優しく、自分にもっと優しく」です。

 

 毎日をなんとなく過ごしているうちに、いつの間にか年が明けてしまったようですが、本年も変わらずこのブログでは、アイドルマスターシャイニーカラーズ」についてゆるゆると語っていきたいと思います。

 

 それにしても、直近のシャニマスの盛況ぶりには目を見張るものがありますね。

 12月31日の深夜なんて、杜野凛世さんの新PSSR【さよならごつこ】の実装までのカウントダウンをあらゆる放送局が行い、最近では日本人の半数以上が「【さよならごつこ】を引けますように」という願いを込めて神社を訪れているようでございます。(しかも作中の杜野凛世さんと似たような服装をまとい、こすぷれ気分で訪れる女性の方も多いようです)

 

 さて、そんな日本中が注目する【さよならごつこ】ですが、あまりにも素晴らしすぎるイラストで、初めてみたときは動悸が止まらず、うまく呼吸ができず、夜は寝付けず、軽く死を覚悟するレベルでした。

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▲起動するだけでQOL爆上げのタイトル画面

 コミュの雰囲気も毎度のことながら大変美しく、激しいドラマこそ無いものの、読み進めるごとに静かな多幸感に包まれていくような良い物語でしたね……。

 

 ともすれば、こんな作品を分析したりすること自体が無粋かと思いつつ、どうしても書き記しておかずにはいられませんでしたので、いつもの通り感想と考察を綴って参りたいと思います。

 

※実装されたばかりのカードですので、ネタバレにはくれぐれもご注意ください!!

 

■今まで本ブログで書いたシャニマス関連の記事はこちら。

shirazu41.hatenablog.com

shirazu41.hatenablog.com

shirazu41.hatenablog.com

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shirazu41.hatenablog.com

shirazu41.hatenablog.com

 

▼本記事の目次

 

第1章 【われにかへれ】との対比

 本カードを手にした多くのユーザーは、まずTRUE ENDのタイトルを見て驚愕したに違いない。「我に帰れ」……説明するまでもなく、2020年8月11日に実装された、杜野凛世5周目PSSR【われにかへれ】を想起せずにはいられない名称である

 

 シャニマスのコミュは他との明確な繋がりのない単話完結型のものが多いが、本作はコミュの内容としても

・事務所から遠く離れた地が舞台であること

・そこへ向かう車内から物語が始まること

・赤と青の色彩が印象的に登場すること

・ムービーが挿入されるコミュの山場では、夜の情景が切り取られていること

などなど、【われにかへれ】との共通点が多く、その繋がりを強く意識して制作されたものである可能性が非常に高い。

 

 真偽の程は不明だが、思い出アピールLV5に登場する「510」という数字も、【われにかへれ】が実装されてからの日数なのではないか、という考察もネット上では見られている。

 

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▲[510]ひかりさす

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 ※正確なリリース日とは若干ずれが生じているが、作中で凛世が帰京した日付を「1月3日」とすれば辻褄は合う。(もちろん、この記事を1月3日に公開したのもこのためである!!)

 

 (ちなみに余談だが、「ひかりさす」と合わせて、「N700系 ひかり510号」=東海道・山陽新幹線(東京方面行)を表すという説も存在しており、凛世の実家が「鳥取県」であることを考えるとこちらの説も有力である。ダブルミーニングなのか、そのほかにも意味があるのかは神とシナリオライターと高山のみぞ知る…)

 

 以上を踏まえ、この章では【われにかへれ】との関連性を主軸に議論を展開していく。

 まず着目したいのは、【われにかへれ】と【さよならごつこ】では、対照となる要素が数多く散りばめられていることである。

・「夏」と「冬」

・「仕事としての旅行」と「プライベートとしての帰省」

・「プロデューサーと二人きりの旅」と「プロデューサと離れ離れになる旅」

・「蛍の光が灯る」と「着信でスマホの画面が灯る」

などなど、多数の対比が見受けられる中で、特筆すべきはやはり「プロデューサーと心が通じ合えない関係性」が「プロデューサーと心が通じ合う関係性」へと変化したことであろう。

 

 該当の場面は、3番目のコミュ『遠きにて』で描かれる。

 姉夫婦、そして母親と共に晴れ着姿で初詣へ出かけた凛世。大晦日の深夜ということもあり、周囲はお祭りムード一色だが、姉夫婦の仲睦まじい様子と、「南天」「チョコレート」を想起させる「赤いりんご飴」の光景に感化され、プロデューサーへの想いは募っていくばかり。

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▲姉夫婦のやりとりを反芻する凛世

 どうしてもプロデューサーの声が聞きたくなった凛世は、ついにはお祭りを一人抜け出して彼に電話をかける。着信音が10回続いたら諦めて電話を切る、というルールを自らに課してその応答を待つ中、ちょうど10回目にしてプロデューサーがその電話をとるのである。

 この一連の情景が、ムービー、立ち絵、ボイス、BGM、SE、シチュエーション全てが最高のクオリティで構成される、まさにシャニマス史に残る名場面と言えよう。

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▲命に変えても守りたい笑顔

 この場面での凛世の行動からは、プロデューサーを恋慕う想いがもはや抑えようもないほど大きくなっていることと同時に、【われにかへれ】やGRAD編においてプロデューサーから言われた「わがままになってほしい」という発言を踏まえた成長も感じられる。

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▲【われにかへれ】より

 【われにかへれ】では不貞寝、【杜野凛世の印象派】ではその場を立ち去る、という形でしか恋心ゆえのもどかしい感情を表現できなかった凛世が、「お声を聞きたい」という一心でプロデューサーに電話をかける積極的な姿には涙を禁じ得ない。

 また、プロデューサーや姉夫婦の迷惑を考え、10回という制限を自らに課しているのも、後先考えずに逃亡して迷子となった【杜野凛世の印象派】の時からの成長を感じ取ることができる。

 

 一方、この場面ではプロデューサーについても、大きな変化が感じられる。

 【われにかへれ】の『月があたらしい』において、凛世の心の声と蛍の声を重ね合わせ、「……聞こえたらいいんだけどな」と呟いていたプロデューサーが、今回のコミュで凛世の心の叫びとも言える着信に気づいたのは、まさに鳥肌の立つ瞬間である。

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 あのとき聞こえなかった声が、510日もの歳月を経て、ようやく携帯電話の着信音という形でプロデューサーに届いたのである。

 

 また、【われにかへれ】においても【さよならごつこ】においても、ムービーシーンの直後に、画面全体が白く光り、凛世が言葉をこぼす場面が存在するが、前者が「―しい……」とプロデューサーには届かなかったのに対し、後者では「―遠い……」という言葉がきちんと届いているのも実に感慨深い。

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▲【われにかへれ】

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▲【さよならごつこ】

 最初は二人を分かつ距離が恨めしく辛かった凛世だったが、遠く離れたことによって逆にプロデューサーとの関係性が深まったことを認識し、「遠い」という状況さえこのとき愛おしく感じたのだろう。そしてその温かい想いは今度はきちんとプロデューサーにも伝わり、二人の心に光が差し込んだ瞬間と言える。

 「成就した恋ほど語るに値しないものはない」とは小説家・森見登美彦の名言だが、電話が繋がったあと二人の交わした会話がコミュで描かれていないことも非常にお洒落である。

 

 ずっと傍にいながらも互いの心の声を聞くことができず、すれ違う二人のもどかしい関係性を描いた【われにかへれ】と比較すると、今作【さよならごつこ】では、遠く離れた場所にいてさえも心が通じ合う関係性にまで二人の絆が深まったことが読み取れる。

 まさに、510日かけてようやく1つのゴールに辿り着いた「どエモい」コミュだったと結論づけることができるだろう。

 

第2章 赤と青、そして緑

 本ブログの考察記事で過去幾度も触れてきたことではあるが、凛世コミュにおいて「赤」は非常に大きな意味をもった色彩である。

 【十二月短篇】における「口紅」、【われにかへれ】における「いちご味のかき氷」、【ロー・ポジション】における「ケチャップ」、【さよならごつこ】における「りんご飴」のように、「赤」は一人の少女としての凛世がプロデューサーを異性として強く意識する場面で登場する「恋の色」といっても過言ではない。

 そしてその多くが、口元を染める色彩として表れており、直近の「2021Xmas スペシャルコミュ」においてもナゲットとバーガーを食べる場面で、ケチャップの赤さを強調する台詞があったのが印象的である。

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▲永遠にイチャイチャしていてくれ…

 さて【さよならごつこ】では「りんご飴」のほかに、南天「チョコレート」が「赤」として登場している。

 まず「南天」だが、「私の愛は増すばかり」という本作にぴったりの花言葉を持った、真っ赤な実をつけるメギ科の常緑低木である。2番目のコミュ『南天』においては、凛世とプロデューサーが食事(デート)へと向かう最中に見つけたものであり、「青い空」と対比される存在として登場する。

 赤と青の対比といえば、【われにかへれ】の『むらさき』においても描かれたものであり、その際は凛世がいちご味の赤いかき氷、プロデューサーがブルーハワイ味の青いかき氷を食べて、舌がそれぞれの色に染まる、という描写が記されていた。そして前章で述べた通り、【さよならごつこ】は【われにかへれ】を踏襲した物語であることを考慮すると、ここでの「赤い南天=凛世」、「青い空=プロデューサー」を比喩した舞台装置と捉えることができるだろう。

 

 【さよならごつこ】では、この後「青い空」と「赤い南天」の声を凛世が代弁する場面がある。「青い空(=プロデューサー)」は「赤い南天(=凛世)」に対し、「お前は美しい」と呼びかけているが、まさしく凛世とプロデューサーの「運命の出会い」であるスカウトの場面を想起させるようであり、それに対しプロデューサー自身も「それは俺も賛成だな」と同意を示している。

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▲WING編『運命の出会い』より

 一方、「赤い南天(=凛世)」は「青い空(=プロデューサー)」に対し、「あなたは遠い」と伝えるが、これは純粋に「もっと近くにいたい」という凛世の心の表れと捉えることができるだろう。

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 また、ここからはさらに独自性の強い解釈になってしまうが、このときプロデューサーが少し間を置いて「ああ―」「あんなに高くっちゃなぁ…!」と応じていることについて少し考察してみたい。

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 プロデューサーの中で「青」とは、放課後クライマックスガールズにおけるイメージカラー=アイドルとしての杜野凛世」を象徴する色彩でもある。「あんなに高くっちゃなぁ…!」というセリフには、アイドルとしての凛世が、もはやプロデューサーの手の届かないほど高く飛び立ちつつある(可能性を秘めた)存在であることを暗喩しているのではないだろうか。【ロー・ポジション】やLP編の考察の際にも述べた通り、「プロデューサーとアイドル」という二人の関係性には少しずつ主従の逆転が見られつつあるのである。

 さらに言えば、アイドルとしての姿であればプロデューサーと同じ「青」でいられるものの、「アイドル」という肩書きを捨てた一人の少女としての姿では、「青」から遠く離れた「赤」になってしまう現実をここでは突きつけられているようでもある。

 

 しかしながら、最終的に【われにかへれ】において、赤と青が混ざる(=紫になる)ことは無かったことを考えると、今回のコミュでは赤と青が互いに「呼び交わす」という形で、心が通じ合っている光景が見られているのは、二人の関係性の変化を暗示したような注目すべき変化と言えよう。

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▲【われにかへれ】

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▲【さよならごつこ】

 そして、この「南天」に続いて登場するのが「真っ赤」なパッケージのチョコレートである。凛世はせっかくプロデューサーからもらった大切な贈り物が消えてしまうことを恐れて食べることを躊躇するのだが、思えばこれまで登場した「赤」もそのほとんどが、いずれ枯れてしまうものや消耗品など、「儚い」「一時的」なイメージのもので統一されていた。

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▲惜しがりんぜ

 同じく「恋心」というのも一過性の強い概念である。もちろん凛世においても例外ではなく、この先長い人生の中で新たな出会いを重ねたり、アイドルという肩書きで世界に向けて大きく羽ばたいていったりすることを考えると、「恋する少女」でいられる時間はあまり長くは無いかもしれない。

 そんないつか訪れる終わりに対して恐れを抱く凛世に対して、プロデューサーは大人としての立場から「なくなるんじゃなくて、美味しいという気持ち(=思い出)に変わる」と凛世を優しく諭す。

 

 この「無くならない」という言葉に関連して、本作で新たに登場するのが「常盤色(=緑色)」である。劇中では4番目のコミュ『常盤』にて、凛世の姉から贈られた髪留めの色として用いられており、赤と青双方を引き立たせる色、姉がデート用に使用していた色であることが示されている。

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 「常盤」とは、文字からも明白なように「永久に続く様」を表す言葉であり、円満な家庭を築き既に子宝にも恵まれている凛世の姉から受け継いだものであることから見ても、このコミュでは「一過性の恋(=赤)」とは対照的に、「永遠に続く愛」を象徴した色と言えるのではないだろうか。

 

 凛世は今回、タイミング悪くプロデューサーとのデートにおいては「常盤色の髪留め」は身に付けていくことができず、代わりに「紅のかんざし」でお洒落をする。ここで着目したいのが、プロデューサーとの会話の中で一瞬「本当は緑のかんざしが…」と言いかけた凛世が、今の格好が綺麗だと褒められたことで、「隣を歩ける方が嬉しい」と伝え直すやりとりである。

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 人によって大きく解釈の割れそうな場面ではあるが、今の凛世は、「彼氏と彼女」「夫と妻」というような客観的で強固な関係性・肩書きよりも、今のプロデューサーとの不安定で儚い関係性を気に入っていることを示すやりとりなのではないかと私は考察している。

 つまり(劇中では確実にありえないことであるが、)凛世がプロデューサーに対し交際を迫るようなことはありえないと言い換えても良い。また、反対にプロデューサーが仮に今後凛世にプロポーズしたとしても、凛世は今の関係性を壊したくないという想いから断ってしまうのではないか、という推察でもある。

 

 凛世は今、「一人の少女としてプロデューサーという男性と親密な関係になりたい」という願いと共に、「アイドルとプロデューサーとしての関係性を壊したくない」という大きなジレンマを無意識に抱えている。そんな不安定な状況は決して長くは続かず、大抵の場合その恋は成就することのない「青春の1ページ」として儚く消え去ってしまうことだろう。

 

 生涯独身を貫いた歌人・山崎方代は晩節に「南天」と「恋」を題材にして、自身の人生を振り返り以下のような歌を残している。

 

一度だけ 本当の恋が ありまして

南天の実が 知っております

 

 凛世が今抱いている気持ちもいずれ、「南天の実」だけが知る恋になってしまうかもしれない。しかし、だからこそ今だけは強く美しく輝き、我々を魅了してくれるのである。

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 作中でプロデューサーが述べていたように、たとえ形としては残らなくても、その「青春」はかけがえのない「気持ち」へと変化し、凛世にとって人生の糧となり、標となり、支えとなってくれるだろう。

 「ごっこ」ではなく、本当の「さよなら」が二人を訪れるその日まで、この物語を見届けていきたい。

 

 

▼蛇足:後日、思い出アピールの「510」の謎について再調査した記事です。

shirazu41.hatenablog.com

 

 

勝手に開催!好きなシャニマス二次創作選手権!!

はじめに

 お久しぶりです。ツユモです。

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 今回はタイトル通り、アイドルマスターシャイニーカラーズ』の好きな2次創作を勝手に紹介していくだけの記事になっております。

 いつだったか、「今度暇だったらシャニマスの布教記事を書きます」などと考えもなしに述べてしまった記憶があるのですが、いざ未プレイの方にシャニマスの魅力を伝えるようとすると、非常に難易度が高い行為であることに気づきました…。

 例えば、イラストが良い、キャラデザが良い、シナリオが良い、曲が良い、などなどコンテンツの断片的な魅力を並べ立て、それがいかに素晴らしいものであるかを論理的に(もしくは感情的に)力説したとしましょう。しかし、そんなことは公式の製作陣を筆頭に、多くの先人たちが死に物狂いでやってきたことであり、こんな個人ブログがその道をなぞったところで焼け石に水にもほどがあります。

 特に個人的にシャニマスの一番の魅力だと感じている、「シナリオのクオリティの高さ」という長所は、実際に長い時間をかけて読んでいただくほかに伝えようがありません。

 

 では、どうすればこれまでシャニマスに触れたことのない人間に短時間で興味を抱かせ、その心を揺さぶることができるのか。その一つの答えは、そのコンテンツが「いかに多くの人間を狂わせているか」を示すことではないでしょうか。

 昔どこかで読んだ(曖昧)、サブカルチャー論についての本には、現代におけるコンテンツの流行度とはその「2次創作の量」によって推し量ることができると述べられていました。かつて偉大な文学作品や研究発表に対して多くの批評や論文が生まれ、学者たちがその人生をかけて向き合ったように、現代では質の高いサブカルチャーに対してそのファンがイラストや動画や小説を無限に生み出し続けているのです。

 「創作」とは人間が行うあらゆる活動の中でも、特に莫大なエネルギーを要するものであることは言うまでもありません。そして、その創作活動が何かしら自らの利益に結びつくならともかく、ただただ「1次コンテンツ」に対する愛のためだけに、貴重な労力や時間を削る行為である「2次創作」とは、まさに純粋な「狂い」と言えるでしょう。そしてその狂いが大きければ大きいほど、その元となった1次コンテンツはとてつもない影響力と人の心を動かす感動を秘めたものであることの証明にもなるのです。

 2次創作とは本来的には1次コンテンツを知っている者が、知っている者に向けて発信する文化かもしれませんが、ここではあえて布教の一環として様々な2次創作を紹介してみたいと思います。そもそも、現在執筆しているこのブログ記事も広義では「2次創作」といえるかもしれません。

 シャニマスにひたすら狂わされているオタクが、独断と偏見でシャニマス好きでこれ見てないのは人生損してる!」と思えるくらい良質な作品を集めてみましたので、すでにプレイしている方も、そうでない方もその狂喜乱舞する様を共に味わってみてはいかがでしょうか。

 

 

1.動画部門

①【MV MAD】よりみちサンセット【シャニマス いをさん

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 公式のMVかと見紛うほどハイクオリティな正統派MADを生み出し続ける、いをさんの作品。全作品オススメなんですが、特にここに挙げた『よりみちサンセット』はエモさが人間の許容量を超えておられる…。

 個人的にシャニマス沼に落ちたきっかけとなった思い入れの強いMADシリーズでもあるため、この記事で一番に紹介させていただきました!(公式は早くこの才能を見つけるべき)

 

②【MMD MV】いつだって僕らは/ノクチル【シャニマス 螺旋王さん

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 ライブで歌って踊るノクチルの姿が見られる、シャニマスプレイヤーの夢が具現化したかのようなMV。特にシナリオイベント「天塵」との対比が効いた、サビ部分の演出は必見。いつかノクチルにもこんな未来が訪れるのかな…

 投稿者の螺旋王さんはこのほか、アルストやストレイのMVも制作されているので要チェック!

 

余談:

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▲コメントが最悪すぎて笑ってしまった

 

③【合作】シャニマスマイムマイム【祝3周年】 るぺあさん

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 合作系のMADって(主にカオスすぎて)好みが分かれる作品が多いイメージですが、これは自信をもってオススメできます! いいから全人類見てくれ!!

 テンポよくシャニマスに登場する全アイドル一人ひとりにスポットを当てており、その魅力や特徴をサクサク把握出来るので、未プレイの方や初心者にも超オススメの動画です。

 

④【シャニマス】プレゼント【2ndOP風MAD】 てつ(XIAO)さん

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 プロデュースシナリオの一つである「ファン感謝祭編」に焦点を当てたMAD。

 ゲームの中では育成上のシステムに過ぎない「アイデアノート」をここまで感動的な演出に昇華する手腕に脱帽。公式素材だけでなく、手書き文字・イラストや3Dモデリングもふんだんに用いられていて、とてつもない愛の大きさを感じる…

 

⑤シャイニーカラーズのMUSIC VIDEO がぉすPさん

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 岡崎体育さん×シャニマスという異色の組み合わせ。

 歌詞にぴったり合った素材の選定と、テンポの良い音ハメが気持ちよくて何度も見返してしまう。

 

⑥劇場版シャイニーカラーズ01 でこちゃんさん

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 放クラ主演のバトル映画、というコンセプトの予告動画風MAD。

 構成やセリフはもちろん、BGMやロゴの出し方など、細部に至るまで「それっぽさ」が凄い。前売り券特典はマメ丸プルバックカーですね、間違いない。

 

⑦やっちゃいなよ、そんな大ヒット御礼ロング版ストレイライトの偽予告なんか! hibikiさん

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 こちらはストレイライトで閃光のハサウェイの予告動画をパロった作品。

 天井社長のボイスが全体の良いアクセントになっててガンダム映画としての説得力が格段に増している…

 やっぱシャニマスってバトルものなのでは?

 

2.イラスト部門

 美しすぎる。ルーブル美術館とかに展示されてそう。

 

 中盤から登場する敵勢力感がすごい。

 

 ギャル霧子はいつか公式でもやると信じている。(製作陣へのアツい期待)

 

  幸福論、誕生。

 

 顔が良い。というかもう、全てが良い。

 

 透明感とみずみずしさがあってイイネ…

 

 後ろの樹里ちょこが良い味出してる。シャニマス未来編マジで公式でやってほし〜

 

 これは世間を騒がすスーパー売れっ子中学生アイドルのあさひ

 

 これは冴えないクラスメイトの私にも分け隔てなく微笑みかけてくれるあさひ

 

 にちかWING編のテキストから伝わってくる、彼女の「必死さ」をここまで精細にイラストに落とし込んでるのすごいなあ… 誰か早く幸せにしてあげてほしい。

 

 この方の絵柄めっちゃ好き

 

 実在性を感じるイラストで、"良い"。

 

 和紙に印刷して床の間に飾りたい。

 

 素晴らしすぎるイラストだが、この良さをここに記すには私の語彙力が足りなさすぎる。

 

 あ゛〜〜〜〜〜〜!!(オタクが絶命する音)

 

 なんていうか、もう、ほんとにありがとう…

 

 ※凛世さん関連のイラスト、好きなものが多すぎて収集つかなくなってきたのでこのあたりで次のジャンルに切り替えます…!

 

3.シナリオ部門

www.pixiv.net

 「え、公式シナリオイベント…?」ってなるレベルにハイクオリティなノクチル漫画。「ノクチルが学園祭でバンドを組む」っていう発想自体はよくあるものだけど、登場人物の会話や物語の空気感が本家そのものな上に、浅倉透を中心に起きるちょっとした変化が繊細に描かれていて読後感も非常に爽やか。

 

 あの短いホーム会話からここまで発想を膨らませられるとは…。霧子の純粋さが眩しくて、ほっこりする良いお話。

 

 こういう二次創作を見かけるたびに、アイドル×恋愛という「水と油」に近いテーマで成功しているアイマスというコンテンツの特殊性に気づく。冬優子、幸せになってくれ…

 

 こういう、ストーリーのちょっとした補完的な漫画好き。愛依様イケメンだ…

 

 同じアイドルユニットにならなかったら一生交わることがなかっただろう、じゅりんぜの組み合わせ良いよね…

 

mobile.twitter.com

 今は亡き七草家の父親と、シャニPが似てるっていう公式設定を生み出した人にノーベル賞を授与したい。

 

 心がもう息苦しい…

 

www.pixiv.net

 最後は漫画ではなく、ちょっと大人な雰囲気のSSのご紹介。いろんな意味で公式からは提供できないシチュエーションながら、アイドル引退後の夏葉とシャニPの関係性をリアリティたっぷりに描く名作。

 

4.ネタ部門

 こういうシンプルなやつに弱い

 

 クリスマスにレトルトの中華丼送っちゃう人だし…

 

 HAPPY END…

 

 ギリギリ本編であさひがやらなそうな奇行

 

 ひきこもりあるある

 

 ルカさん、本編での出番の割に二次創作が多すぎて、どこまでが公式設定かわからなくなってきている…

 

 自分はカヲルくん派です。

 

 物語性を感じるイラスト

 

 LP編で「違和感」が読めなかったの見たとき、ちょっと本気で心配になってしまった…

 

 この人の漫画勢いがあってめっちゃ好き

 

 霧子の「さん」付けの法則は深い…

 

 再現度が高すぎる

 

 シュール

 

 やはりシャニマスはバトルものなのでは…?

 

 こういう他作品コラボ、公式でもやってほしい…

 

 事前に許可とるとこも放クラらしくて好き。

 

 衣装コメントの謎が解ける日は来るのか…

 

 Pヘッドについての新解釈

 

 何がとは言わないが、わかる。

 

 どこで流行ってるんだ…

 

www.nicovideo.jp

 ただただ、わかる。

 

www.nicovideo.jp

 シャニマス二次創作界隈、真乃を化け物にしがち。

 

www.nicovideo.jp

 なんなんすかね、これ…

 

5.そのほか部門

mobile.twitter.com

 メガネこんなに持ってるのもすごいし、これを調べ上げる情熱もすごい…

 

note.com

 WEBライターのダ・ヴィンチ・恐山氏が書かれたブログ記事。

 シャニマス世界のモブは確かにとても印象に残りやすい…。

 

rgrey127-diary.hatenablog.com

 「天と地がディストーション」のところの考察が目からウロコ。

 

nezaren.hatenablog.com

 リリース開始前の時期に、苗字マニアの方が書いたブログ記事。世界は広いなあ…

 

animanch.com

 『仮面ライダーW』に登場する、怪人に変身するためのアイテム「ガイアメモリ」を283プロのアイドルたちに当てはめて新規デザインを描き起こすという趣旨のスレッド。 

 デザインのクオリティはもちろん、A~Zを一つずつ使うという縛りがある中でモチーフの選定にも納得感があって凄い。

 

おわりに

 別に製作者というわけでもないのに、好きな二次創作をめちゃくちゃ紹介できて、なんだか今すごく満足しております。

 ただ、昔保存したスクショを元にこの記事に掲載するために検索してみたら、今ではアカウント自体が消えてしまっている作品もちらほらあったりしたのはかなり悲しかったです…

 と、ここまで書いていてふと気づいたのですが、シャニマスもソシャゲである以上、いつか(おそらく10年以内に)サービス終了して誰もアクセスすることができないコンテンツになってしまうんですよね。今の時代、映像作品なら基本はDVDや各種配信サービスで残りますし、紙作品ならたとえ絶版になったとしても国会図書館に行けば閲覧可能ですが、これがソシャゲという媒体の一番悲しいところです…。

 そうした未来が訪れたとき、こういった二次創作がシャニマスというものが確かに存在していたことを証拠付ける記念碑になるのかもしれません。

 ちょっとセンチメンタルな気分になったところで、この記事は締めさせていただきます。皆さんも「これはいいぞ!」という作品があったら是非おしえてください!

 それでは、みなさま良いシャニマスライフを~。

 

www.youtube.com

 

 

【シャニマス】杜野凛世Landing Point編に魅了されたオタクの怪文書

はじめに

 お久しぶりです。ツユモです。

 

 今年も上半期が終了し、いよいよ夏真っ盛りですね。

 『アイドルマスターシャイニーカラーズ』では約2ヶ月ほど前からGRAD編に続く新シナリオ・Landing Pointがユニットごとに続々と実装され、プレイヤーの皆様はコミュを追うのに忙しい今日この頃かと存じます。

 

 かく言う私もここ数ヶ月、イルミネ・アンティーカのLP編シナリオの完成度の高さに感動したり、まさかの千雪さんブライダル実装に動揺したり、シーズ初イベントである「ノーカラット」の無慈悲さに絶望するなど、慌ただしい毎日を送っておりました。

 

 さて、そんな中とうとう実装された杜野凛世さんのLP編ですが、その感想を綴っていく前に少し余談から。

 

 ちょっと深刻な話になってしまうのですが……

同日実装された【キング・アンド・ヒーロー】のイラスト良すぎません!?(大声)

 

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▲浴衣三つ編みおさげドヤ顔眼鏡凛世の破壊力

 

 いきなり眼鏡凛世を直視したらあまりの可愛さにオタクたちが衝撃に耐えられないから、いったんスマホの写真加工による擬似的なメガネ装着によって目を慣らしてあげようという配慮が感じられますね…

 

 おかげでなんとか心肺停止で済みました。

 果穂さん夏葉さんも可愛いし、こんな素晴らしいイラストを無料配布するシャニマスってほんとに良いゲームですね……(昇天)

 

 

 そんな傷も癒えぬ中はじめた杜野凛世さんLP編でしたが、今までの凛世コミュと少し雰囲気の異なる、大変興味深いシナリオでした…!

 

 もちろん毎回恒例のプロデューサーとの胸キュン要素もありつつ、鶴に虎、はたまた幽霊や、謎のルー大柴風舞踏家まで登場する、要素盛りだくさんでいつも以上に解釈の難しい内容だったな、というのが第一印象です。

 

 そして何より感じたのが今回のLP編は、「アイドル・杜野凛世」としての新たな出発点である一方、「恋する少女・杜野凛世」としての着地点(=Landing Point)としての意義が込められている、ということでした。

 

 正直まだまだ咀嚼しきれていない箇所も多く、杜野凛世学会に在籍する有識者の皆様のご意見を待ちたいところですが、まずは個人的に抱いた感想や考察をいつものごとく綴っていこうと思います。

 

■今まで本ブログで書いたシャニマス関連の記事はこちら。

shirazu41.hatenablog.com

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第一章 アイドルとしての再出発

 今回のLP編では凛世の、アイドルという「芸事」に対する向き合い方への変化が大きなテーマとして描かれていたが、ここではまず、凛世が初めて芸事の世界に触れた幼少時代について紐解いていきたい。

 

  LP編で何シーンにもわたって登場する回想において印象的なのは、母親から日本舞踊の厳しい指導を受ける姉と、部屋の外で折り鶴をしながらその様子を静かに伺っている凛世の対比である。

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 凛世の姉といえばSSSR【夜明けの晩に】において初めてスポットのあたった人物であり、このときの「凛世が8つの折……遠いところへ……お嫁さんに……」というセリフから、凛世とはおそらく10歳前後、年の離れた存在であったことが伺える。

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 今回の回想の場面において、姉が熱心に稽古を受ける一方、凛世自身が稽古に出る様子が描かれていないのは、やはりこのときの凛世がまだ舞踊を習うには幼すぎたから、というのが大きな要因であろう。

 とはいえ、姉や母が日本舞踊の練習にこれほど熱心に打ち込んでいる家庭であることや、凛世のプロフィールの趣味欄に「芸事全般」とあることから推察するに、おそらくこの回想の場面の数か月後か数年後かは定かではないものの、凛世自身も舞踊の稽古には幾度も参加していたはずである。

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▲趣味:芸事全般

 ではなぜ、今回ダンスレッスンをきっかけに凛世が想い出す場面は、「姉の姿」ばかりで、肝心の凛世自身が舞踊の指導を受けているような回想は一切出て来ないのだろうか。

 この点に関してだが、凛世はこれまで「芸事とは自分とは違う誰かのものであり、自身は蚊帳の外からその真髄に触れること無く傍観するしかない」という考え方を無意識的に抱いてきたからだと私は考えている。

 

 凛世は由緒正しき家柄で幼い頃から芸事を習い、立派な大和撫子として成長しつつも、その心の奥底にはずっと「舞踊では空が飛べない(から稽古に参加したくない)」と述べた幼い凛世のような想いがくすぶっていたのではないか、という仮説である。

 より正確に言えば、凛世にとって「芸事」とは自分の本心とは異なる巨大で外発的な力によって「何となくやらされている=拒否権無くやらざるを得ない行為」であり、嫌ってはいないまでも、どこか「他人事」に近いことのような感覚を持ち続けてきたのではないだろうか。

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▲稽古の誘いを断りんぜ

 

 冒頭、千円紙幣で鶴を折る不思議な少女の描写から始まる本作だが、このときの少女の声を凛世があてていることや、「折り紙を楽しむ」という行為の共通性から見ても、この少女は過去の凛世に重なる存在であると言える。

 紙幣とは、誰もが欲しがる高い価値を持った貴重品であることは言うまでもないが、少し詩的な表現を用いるなら、自由に何かを書き留めたり、折り曲げて楽しんだりといった、本来紙として持つはずだった価値を奪われ、貨幣制度という制約によって縛られた「籠の中の鳥」とも言い換えられるだろう。

 そして冒頭で出てきた少女は、金銭という世俗的な価値には一切目もくれず、「本来飛ぶことのない縛られたものが宙を翔けること」を無邪気に喜んでいるが、それはおそらく自身の存在を無意識的に紙幣に重ね合わせた、「自由を手に入れたい」という欲求の裏返しでもある。

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▲ちなみにこのあたりの文章は、斎藤茂吉の随筆文『紙幣鶴』からの引用である。

 

 かつて、姉から誘われた稽古を「舞踊では飛べない」と凛世が断ったのは、普段から由緒正しき家柄という環境が持つ窮屈さや閉塞感に欲求不満を抱いていたこと、姉が厳しく叱られている様子を間近で見てきたことなどから、「芸事」とはさらに自身を縛りつけてくるような自由の対極にある何かだと幼いながらに感じ取ったからに違いない。

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 だがもちろん小さな娘が家の風習をいつまでも拒絶し続けることなどできるはずもなく、やがて「空を飛びたい」という欲は少しずつ心の奥へと押し込められていくことになる。そして、特にそのほかの選択肢も与えられないまま、自由とは程遠い芸事の世界に身を置くことを運命として受け入れることで、凛世は成長してきたはずである。

 もちろん現在の凛世が芸事をあからさまに嫌っている描写など無いし、ときおり実家に向けて手紙をしたためる描写などを見るに、今となっては実家での雅な生活をそれはそれで愛おしい思い出として大切にしているのは事実である。

 

 だが、やはり「厳しく叱られる姉」「なぜそんなにも周囲が熱心に芸事に励むのかわからない自分」という幼い頃の回想描写を見るに、もともと凛世にとって芸事とは、本気でのめり込むことのできる夢や青春などではなく、自身が生まれた古きを良しとする家庭環境に順応し、母親から求められる大和撫子でいるための「手段」として始めたことであったということは想像に難くない。

 思い返してみると、凛世がアイドルを始めることになった動機も、「アイドルになりたい」という純粋な夢を叶えるためではなく、自分を新しい世界へ連れて行ってくれる(=空を飛ばせてくれる)プロデューサーという存在の近くにいるための「手段」として必要だったからである。今回のLP編でもそうだが、アイドルとしての凛世がGRAD編からたびたび「欲がない」「パッションが感じられない」という指摘を受けるのも、この出発点の「歪み」に原因があると言えるだろう。

 

 LP編5つ目のコミュ『飛ばせ』において、ダンストレーナーは凛世の弱点について、「自分をどんどん型にはめていってる」「綺麗だね、丁寧だねって褒められることに、ちょっとしがみついちゃってる」と分析している。

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 凛世はおそらく幼い時分から、母や姉に言われる言葉の意味を理解するより先に、とにかくやるのが当たり前のこととして日本舞踊の厳しい稽古を受けてきたはずである。その結果、確かに美しい所作と技術を身につけることはできたものの、それは自身の内発的な向上心によって得られたものというよりは、厳しい母様に叱られないための誰が見ても完璧な「型」を処世術的に身につけたものという方が近いはずである。

 

 だからこそ、凛世はアイドルになった今も自分を絶対的な正解としての「型」に自分をはめこみ、上達や挑戦よりもとにかく目先の承認の言葉を求める姿勢が抜けていないと指摘されているのでないだろうか。(ダンストレーナーは、これを凛世の抱く「プライド」と呼んでいる)

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 そんな凛世の「プライド」に大きな変化を与えるきっかけとなったのは、『虎と友禅』に登場した「注目のモデル」の存在である。

 のちに登場する舞踏家もそうだが、友禅を着こなし、「和」を体現したような少女である凛世に対し、やたらと英語を多用する破天荒なこれらの人物は、意図的に凛世の価値観を揺るがす対比的な存在として描かれている。

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 まずは少しこのあたりのあらすじを振り返りたい。

 ブランドの新作披露のレセプションにて、アイドル代表としてミニコンサートを行った凛世だが、出場者の一人、「ガオ!」を決め台詞とする話題のモデルの圧倒的なカリスマ性に会場の話題は持って行かれてしまう。「芸事は誰かと比べるものではない」と頭では理解しつつも、モヤモヤとした浮かない気持ちを抱えながらレッスンに励む凛世。このとき凛世の心を支配していたのは、モデルに対する嫉妬や焦燥感であった。

 

 さて、凛世が女性に対して「嫉妬心」を抱くコミュというと、1周目PSSR【杜野凛世の印象派】の『drawing2(まどひあか)』が想起される。プロデューサーが取引先の綺麗な女性と親しげに話す様子を見て、凛世が思わずその場を立ち去り、二人が離れ離れになるというコミュである。

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▲完全に余談だが、個人的にこのときのお相手は善村記者で脳内補完している。

 

 ただ1周目PSSRと比較して決定的に異なるのが、今回のコミュでは、自らと同じステージの上の存在に対し、「アイドルとしての敗北感」から嫉妬を感じている点である。

 【杜野凛世の印象派】では、おそらく仕事の合間、オフの時間に偶然出会った知人女性に対し、プロデューサーを取られたような気分に陥り、その場から逃げるように立ち去り、それをプロデューサーが後から追いかけて探すという構図が取られていた。一方、LP編ではステージ上のモデルに対して、プロデューサーが魅了されたという事実をまっすぐに受け止めつつ、そこから「嫉妬」と「悔しさ」をバネに、個性の強い舞踏家の特訓に食らいついていくさまが描かれている。

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 これまで自分だけを見つめてくれていたプロデューサーが、一時的とはいえ他人であるモデルのステージに魅了されたことに凛世は大きな衝撃を受けたはずである。なぜなら、幼い頃は自分を縛り付ける枷のようにしか思えなかった「芸事」が、その道を極めることで見るものの心や、世界をも動かすことのできる可能性を秘めた、実は最も自由になるための近道であったことに初めて気がついたからである。

 

 同時に、幼い頃には理解できなかった「頭からつま先まで……全部自分のものになれば、飛べるのよ?」(=芸事を極めれば、自由になれる)という姉の言葉の意味を、このときようやく自分ごととして理解したことだろう。

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 余談だが、「芸事を極める」=「空を飛べる」というイメージは、今回登場した舞踏家の先生にも表現されており、最後のコミュ「舞台」では、飛行機で旅立った先生を「あの方は……空を……お飛びになられますゆえ…」と見送った凛世の台詞にも表れている。

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▲見送りんぜ

 これまで凛世にとってのアイドル活動とは、プロデューサーのそばにいるための手段であり、【われにかへれ】が印象的だが、ときにはアイドルという立場があるがゆえに思い通りに距離を縮められないという「枷」に感じたこともあっただろう。

 しかし、今回のLP編をきっかけに、「芸事(=アイドル活動)を極める」という行為が、「やらされる、やらざるを得ない手段の一つ」ではなく、「純粋に上達したい=目の前のプロデューサーを魅了したいという目的」に変わり、凛世は芸事の世界に真の意味で足を踏み入れたのである。(=劇中では「舞台の端に立つ」と表現されている)。

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 枷や束縛では無く、むしろ自由である。そんな芸事の真髄を理解した凛世には、かつて芸事を極めてきた人々や、これから極める人々のひたむきな想いが幽霊のように見えてきた、とLP編の最後では締めくくられているが、冒頭登場した幽霊の台詞と思われる「ふふふっ……!」に注目したい。

 

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 短い台詞な上にボイスが無いためどこまで同一性を担保できるかはわからないが、凛世の回想場面で登場する姉がこの「ふふふっ」という言葉をよく使っていたのは偶然では無いと私は考えている。自分よりも一歩早く芸事の真髄を理解し、いつもひたむきに稽古に取り組む姿を間近で見てきた凛世にとって、芸事の探求の概念である「幽霊」の声は、凛世の耳に姉そっくりの声として響いたとしても不思議ではない。

 

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 確かに幼い頃の凛世は稽古を受けることに対して消極的ではあった。

 しかし、決して興味を持たなかったり、舞踊を軽んじていたりしたわけではなく、姉が稽古を受けている間も傍を離れず、その様子に聞き耳を立てていた。それは、不器用ながらも必死で空を飛び、景を動かそうとする姉の努力に密かに心動かされ、憧れ、尊敬していたからであろう。今となっては踊りという技術的な面で当時の姉を超えたのはもちろんだが、LPでの出来事を通じて心意気の部分でも追いついたことで、今度は凛世が芸事の探求者として、誰かの心を動かす存在となっていく。そんな未来への希望を感じられる、あたたかな締めくくりであった。

 

第二章 恋する少女としての着地点

 この記事の冒頭、今回のLP編はいつもの凛世コミュとはやや雰囲気が異なるものだった、と述べたが、その要因の一つは登場人物の多さ、そしてそれによるプロデューサーと凛世のやりとりの少なさによるものと言える。

 これまでよくも悪くもプロデューサーと凛世の二人だけの美しくも儚い世界を描くイメージの強いコミュが多かったのに対し、今回はダンストレーナー、舞踏家、注目のモデル、過去回想の母や姉など、プロデューサー以外に、凛世の背中を押してあげたり、変化のきっかけを与えたりする存在が多数登場してくる。

 そして肝心のプロデューサーについては、『飛ばせ』において「その……ごめんな あげられるものが、レモンティーだけなんてさ」と述べている通り、今回は主体的に凛世に働きかける場面があまり無く、テーマである芸事の上達という点においては蚊帳の外にいると言っても過言では無いかもしれない。

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 ここで今までの二人の関係性について改めて振り返ってみると、「大人であるプロデューサーが、アイドルとして羽ばたき始めたばかりのヒナである凛世をサポートし、逆に凛世はそうやってプロデューサーに支えてもらうという行為を通じて、彼の近くにいられることに幸福を感じていた」とまとめることができるだろう。

 そもそも出会いの時点で、自分のハンカチを千切ってまで鼻緒を直してくれたことや、「最高の舞台に連れて行ってみせる」という言葉に心が強く惹かれてアイドルを始めたことからも伺えるが、もともと二人の関係は対等ではなく、プロデューサーが凛世に対して何かを与える、という構図によって成り立っていたのである。

 しかし、【ロー・ポジション】の考察の際にも述べた通り、直近のコミュでは徐々にこの関係性の逆転が見られつつある。

 例えば、最新のPSR【階段式純情昇降機】TRUE ENDでは、仕事で疲れきって事務所のソファで仮眠をとるプロデューサーを起こさないよう、凛世がパンケーキを差し入れするという場面で締めくくられるが、この「疲れて寝ている相手を起こさないように」と気遣う行為は、ファン感謝祭編で見られた、プロデューサーがイベント帰りの凛世に対して行っていた配慮との対比になっている。

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▲感謝祭編ラストのやりとり

 一応今回のLP編でも、寮に到着したが、寝始めたばかりの凛世を気遣ってさらにドライブを続ける、という描写は存在するものの、感謝祭編と異なるのは、目を覚ました凛世がまずプロデューサーに対し謝罪する点である。

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▲LP編でのやりとり

 もはや一方的に支えられる状態に対して心地良さを感じることはなく、段々と「共に支え合いたい」という気持ちが強くなっていき、そして今回のLP編ではむしろこちらが何かを与えたい(=魅了し、支えたい)というところまで凛世の心境は変化しつつある。

 歌や踊りなどアイドルとしての技術的な部分において「優等生」だったぶん、他のアイドルと比べ感情面に関しては比較的未熟に描かれてきた凛世だが、少しずつプロデューサーをも追い越すほどに、大人へと近づきつつあるのである。

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▲イラスト上も凛世が一歩前を行き、見下ろすような構図が印象的。

 

 もう一つ重要なのは、今回凛世の中に芽生えた「プロデューサーを魅了したい」という想いが、一人の少女としてではなく、アイドルとしての決意表明として発せられている点である。

 確かに『飛ばせ』において、「凛世と……先日のモデルの方………! どちらが……魅力的でございましょう………!」と恐る恐る尋ねた瞬間の凛世の心境には、もちろん少女としての純情も多分に含まれているだろう。

 しかし、その問いに対するプロデューサーの答えを、夜景の見える海沿いという最高にロマンチックなシチュエーションで受け取ってしまうのではなく、答えはステージの後で、と遮ってしまう点であったり、そのライブ当日も、今回はホームでのイベントだからノーカウントである、とアイドルとしてどこまでもストイックな姿勢を見せている点を見るに、モデルに対して、「恋敵」としてではなく「アイドル」として純粋に負けたくないという想いが垣間見える。

 そして、これまで半ば盲目的に信頼を寄せていた、最愛のプロデューサーの「(凛世は)魅力的だよ」という言葉に対し、「嘘で……ございます……」と初めて疑いを向けているのも特筆すべき変化であると言えよう。

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 【ロー・ポジション】TRUE ENDにおいて、アイドルではない凛世、そしてプロデューサーではないプロデューサーを互いの前でさらけ出すほどに距離の縮まった二人だが、凛世は今回、肩書きを伴わない一組の男女として関係性を深めていくことではなく、「アイドルとしての杜野凛世」によって、「プロデューサーではないプロデューサーさま」(=凛世のファンとしてのプロデューサー)を魅了したいと誓う。

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 もちろん、これまで凛世が恋する乙女として抱いてきた「欲しい」という強い純情は消滅したわけでは無い。しかし、少しずつ確実に、乙女としての「欲しい」は、アイドルとしての「欲しい」に昇華されつつある。

 もはや【杜野凛世の印象派】で姿をくらませたり、【われにかへれ】で不貞寝したり、GRAD編で音信不通になったりしたような「恋する乙女としてのわがまま」は見えず、観客の心を虜にする「輝くアイドルとしての強い向上心」が芽生えているのである。

 

 これはある意味、恋人として傍で寄り添い、間近で互いに支え合いながら距離を縮めていく道を自ら切り捨て、これまで舞台袖で見守ってくれていたプロデューサーを観客席まで引きずり下ろす選択でもある。

 すでに彼女の背中を押し、新たな世界を教えてあげる存在はプロデューサーだけではなくなったことが今回のLP編では描かれたが、凛世はこれからどんどんプロデューサーの手を離れ、彼の手には届かないほど大きく空へと羽ばたいていくだろう。そんな美しくも少し寂寥感のある未来を想起させる、一つの「着地点」が今回描かれたと私は解釈した。

 

 ただ、「まだまだ……これからでございます……」と凛世自身述べている通り、そうした未来が訪れるのはもう少し先の話である。

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 今回、凛世はモデルに敗北を味わったり、舞踏家に厳しい指導を受けたりといった試練を経験しつつも、プロデューサーの前では弱音を吐かないように(=「アイドルではない自分」を出さないように)振舞っていた。しかし、プロデューサーはそんな凛世の「無理」に唯一気づくことのできる存在として、その本心に耳を傾けることで、アイドルとして頑張る活力を与えている。

 

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▲【われにかへれ】の「聞こえたらいいんだけどな」を想起させる言葉

 

 また、このとき「海の匂いがする」という言葉に対して、凛世が「プロデューサーさまの……香りがいたします……」と返しているのは、おそらくGRAD編で海まで迎えに来てくれたプロデューサーとの思い出で胸がいっぱいになっているからであろう。

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▲GRAD編

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▲LP編

 これらのやりとりを見ても、やはり舞台の端に立ったばかりの凛世が羽ばたくためには、まだプロデューサーの存在が必要不可欠である。

 そして、たとえこれから「無理」をせずに理想のアイドルとして活躍できるまで成長し、二人の距離が離れることがあったとしても、凛世にとってプロデューサーがかけがえのない人物であることは決して揺るがないはずだ。

 凛世が「アイドルとしてプロデューサーを魅了したい」という決意を固めるこの場面では、彼女がプロデューサーの手を離れ、世界という新たな舞台に立つのを示唆するかのように、旅立ちの汽笛が鳴り響く。

 凛世の成長とともに、二人だけの「放課後」はまもなく終わりを告げるかもしれないが、その最後の一瞬まで、二人の物語を見届けたいと思う。

 

【ロー・ポジション】杜野凛世 のTRUE ENDに感涙したオタクの12000字超えの怪文書

はじめに

 お久しぶりです。ツユモです。

 

 ついこのあいだ年が明けたと思いきや、気づけばもう4月。

 暖かな日差しと小鳥のさえずりが春の訪れを告げる、そんな季節になって参りました。

 

 そして春といえば、なんといっても「出会いと別れ」の季節ですよね。

 外出自粛が叫ばれる今日この頃ですが、元から家に引きこもってばかりの私にも、つい先日「どエモい」出会いがございました。

 

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▲死人が出る可愛さですよこれは……

  そうです! 

 杜野凛世さん6枚目のPSSRカードとなる、

【ロー・ポジション】杜野 凛世 でございます!!

 

 

 凛世さんのPSSRガシャが発表されるといつも、私は大空に向かって

 

「「最高の出会いに感謝!!」」

 

と全裸で叫んでいるのですが、じつは今回ばかりは素直に喜べないのです…。

 

 というのも、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(通称シャニマス)は3周年を迎え、このガシャ開催から約10日後にあたる4月1日からはなんと、SSR排出確率が通常の2倍の超お得なガシャが控えているのです。

 つまり、そんな年に一度しか無い周年ガシャに備えて少しでも多く石を温存しておきたいユーザーの気持ちも知らず、最悪に近いタイミングで凛世さんはひょっこり現れてしまったわけです。

 

 嗚呼、まるでプロデューサーと凛世のすれ違い続けるもどかしい関係性を反映したかのような、なんとも物語性のあるリリースタイミングですね…!!(やけくそ)

 

 

 ですが、思い出してみてください。

 冒頭にも申し上げた通り、春は「出会いの季節」でもある一方で、「別れの季節」でもあるのです。出会いがあるなら、必ず別れも訪れる……。

 

 きっと今私の目の前で果たすべき「別れ」とは、これまで長い時間をかけてTRUE ENDを回収することでこつこつと積み上げてきた「ジュエルとの決別」を意味するのでしょう。

こうした出会いや別れを幾度も経て、人は大人になっていくのかもしれません……。

 

 

ありがとう、アイドルマスターシャイニーカラーズ。

 

そして、

 

さよなら、周年用に貯めてた石たち─ (♪Dye the Sky)

 

 

♪限界なんて本当はそこにない(10連目)

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♪覆せ、塗り替えて(20連目)

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♪顕在せよ過去を超えてく光(30連目)

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♪この空を!?!?(40連目)

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♪染めるほど強く!!!!!!!

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♪Wow oh……(全裸で踊り狂う)

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(スー……ッ(息を吸い込む音))

 

 

 

 

 

「「最高の出会いに感謝!!」」

 

 

いや、あの、マジでほんとにありがとう…!!(大号泣)

 

 最近ガチャ運悪すぎて、いかにも沼りそうな前フリをしておいた割には、今回奇跡的に40連目で手に入れることができました…!

 

 そしてなんといっても、既にお読みの方はご存知かと思いますが、今回コミュがとにかく「やばい」です。

 

杜野凛世のTRUE ENDが、ほんとに杜野凛世のTRUE ENDでした…。

 

未見の方は何を言っているのかわからねーと思いますが、読んだ方なら確実に共感していただけるはずです。

 

まだ手に入れてない方も、今回のカードは恒常ですので、プレイし続けていればいつか手に入ります!! ぜひ!ぜひぜひ読んでくださいね!!!

 

さて、いろんな感情が溢れすぎてもはやブログを書けるような精神状態ではないのですが、そろそろ前置きもここまでにして、今回も自分なりの感想と考察をがんばって綴っていきたいと思います。

  

 

■今まで本ブログで書いたシャニマス関連の記事はこちら。

shirazu41.hatenablog.com

shirazu41.hatenablog.com

shirazu41.hatenablog.com

 

  

第1章 世界の境界と窓

 前回のPSSR【われにかへれ】の考察の際、「(凛世が)終わりを受け入れること」がテーマのコミュだと述べたが、今回も同様にコミュ全体を貫くテーマがあったとするなら、それは「(凛世とプロデューサーが)世界の境界を超えること」だったのではないだろうか。

 今回は、この「境界」もしくは「隔たり」というキーワードを軸に、順を追って各コミュを振り返っていきたい。

 

1、知らぬ顔

 最初のコミュは、休憩中にフードコートを訪れたプロデューサーが、高校の同級生2人と仲良さそうに会話する凛世の姿を見かける、というシチュエーションである。

 「知らぬ顔」というタイトル通り、ここではプロデューサー(≒ユーザー)も知らない、アイドルという世界の外側を生きる、杜野凛世という一人の人間の生の「放課後」が印象的に描かれている。

 

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▲凛世さんのご学友のお二人。かわいい。

 

 直接凛世自身が発したわけではないものの、冒頭に出てくる「やばい」「うざい」などのいかにも世俗的な語彙や、「親からのメールの内容がうっとうしい」という子供じみた反抗心を漂わせる会話は、普段我々が接する「凛世」という人物が持つイメージからあまりにもかけ離れており、プロデューサーが衝撃を受けたのも頷ける。

 

 また、友人二人が使う「もりちゃん」という耳馴染みのない呼称も、プロデューサー視点での、凛世に対する「新鮮さ」や「違和感」を強調する役割を果たしている。

 いうなれば、冒頭で描かれている彼女の姿は、プロデューサーや283プロダクションの皆、そして我々ユーザーがよく知る「凛世」とは別人の、ただの女子高生としての「もりちゃん」でしかない。

 

 そんな「もりちゃん」を見かけたプロデューサーは、その存在を強く気には留めつつも自ら介入しようとはせず、ただ黙って距離をとったまま、その世界を外側から眺める。

 もちろん、凛世のプライベートな時間を邪魔しないように、という一般的な配慮も含まれての行動ではあるだろうが、ここではそれ以上に、ある種の「後ろめたさ」がプロデューサーをそうさせたのではないだろうか。

 

 というのも、アイドルという枠の外にいる「もりちゃん」の姿が、生き生きと楽しげに映ってしまったからである。

 一緒にいる同級生二人は、「大和撫子」を体現したような凛世とは、価値観も口調も(おそらく置かれて居る環境も)真逆に近い存在でありながらも、凛世のことを深く愛していることがこの短いやりとりから伝わるうえ、凛世自身もそんな二人に対して完全には同調しないまでも、決して自分を押し込めることなく自然体で振る舞う。

 

 そんな「もりちゃん」を見たプロデューサーは、無意識にこれまで自分の目に映ってきた凛世の姿を想起したはずである。

 水族館に置き去りにしたり、屋上に置き去りにしたり、知らず知らずのうちに海岸に失踪するまで追い詰めてしまったり、旅行先で機嫌を損ね不貞寝させてしまったり…。

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▲置いてけぼりんぜ①

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▲置いてけぼりんぜ②

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▲胸が痛がりんぜ

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▲部屋にこもりんぜ

 すべてプロデューサーなりの考えや事情があったこととはいえ、凛世はアイドルではなく「もりちゃん」として生きるべきだったのではないか、という想いが少なからず生まれていたはずである。

 普段ならアイドルとのコミュニケーションを拒否するような姿勢を決してとらないプロデューサーが、凛世が席を立ちプロデューサーのいる方向へ来た際に、「来ちゃったな…… 声、かけるしか───」と、間接的に彼女との「関わり」を拒否するような消極的な思考になっているのがその証拠である。

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 タイトルの「知らぬ顔」とは、「もりちゃん」としての凛世だけでなく、プロデューサーの「ぐちゃぐちゃに引き裂かれた」新たな側面が引きずり出されたことも意味しているのだろう。

 

 まとめると、「もりちゃん」としてアイドルではない「子供の世界」を生きる凛世を、アイドル業界という「大人の世界」を生きるプロデューサーが複雑な心境で「境界」の外から傍観する、というのがこのコミュの構造であった。

 

2、芽ぐむ頃

 一方、2つ目のコミュは、最初のコミュとは打って変わって、取引先相手にプロデューサーや凛世がお酌を迫られる、という「大人の世界」に重きを置いた状況になっている。

 いつもは若い女性アイドルと本音で言葉を交わすことの多いプロデューサーが、ここでは取引先の中年男性に対してご機嫌とりをするという、普段とは真逆の「知らぬ顔」を見せており、先ほどとは反対に「見る側」に回った凛世はその様子をぎこちなく傍観することしかできない。

 

 そして、その後二人が向かったファミレスの場面では、凛世は自分の至らなさゆえにプロデューサーに不快な思いをさせてしまったことを反省する。

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▲修養が足りんぜ

 いうまでもないが、相手の「知らぬ顔」を見てしまったことによって、何らかの負い目を感じ、相手の領域に立ち入ることができずただただ傍観するしかない、という構造は、1つ目のコミュと共通しており、「見る側」「見られる側」だけが逆転した対比になっている。

 

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▲今回の思い出アピールは、「映すもの」「映るもの」

 ただここで一つ注意しておきたいのは、「プロデューサーの世界=大人の世界ではない」という事実が新たに明かされる点である。

 

 プロデューサーは大人(=社会人)として、まだ子供である凛世を庇いながら、世渡り上手な振る舞いを見せてはいるものの、実際は「迷ってばっか」で「わからないことだらけ」だと、初めて凛世の前でその心情を吐露する。

 「大人の世界」とは、より単純に「社会」や「世間」と言い換えても良いかもしれないが、プロデューサー自身もまた、表面上は社会と上手く折り合いをつけつつも、完全には社会に対して溶け込むことができていない、成長途上の人間であることが印象付けられているのである。

 

 ここで、「大人って、不思議だよな」「(凛世が大人になるのは)俺より先かもしれない」といった、「大人の世界」を俯瞰し、自分がまだその世界に迎合できていないことを示す言葉が用いられていることに着目すると、凛世の世界とプロデューサーの世界の外側には、さらに「社会」という、まだまだ大人になりきれていない彼らには大きすぎるほどの「第3の世界」が広がっていることがわかる。 

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 余談だが、1つ目の『知らぬ顔』のフードコート、2つ目の『芽ぐむ頃』の居酒屋での会話を「音」に着目して聴き返すと、二人の外側にある「社会」の存在を強調するような、周囲の「雑踏」がBGMとして効果的に使われている。

 

 また、『芽ぐむ頃』の最後で凛世は、「なりたいです……大人に…… プロデューサーさまよりも……早く……」という意志を示すが、ここでの「大人になる」とは、自分たちの外側にある社会との境界線を越えることを指すと言えるだろう。

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▲GRAD編の「自分の欲を出す」という成長を踏まえつつ、常咲の庭の「ただ付いて行きたい一羽の雛鳥も空を目指す」という歌詞もどこか彷彿とさせるような、良い言葉である(早口)

 

3、春雪

 こちらは、「雑踏」が印象的だった前二つのコミュから一変、春の早朝の張り詰めた空気を彷彿とさせる「静閑」が特徴的なコミュである。

 仕事のため、夜が明ける前から車を走らせ、凛世の暮らす寮へと迎えに行くプロデューサー側の視点と、そのプロデューサーを温かい味噌汁を作って一人待つ凛世側の視点が交互に描かれるのだが、互いが相手を想い合う様子が、最低限の描写で美しく、かつ情緒たっぷりに記されている。

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 本コミュ終盤、「寮」という凛世のプライベートな領域に、プロデューサーが踏み込んでいく描写が象徴的だが、このコミュを境にして、これまで互いの世界を外側から眺めるだけだった二人が、互いを強く想い合うことで「境界」を超え、相手の世界に踏み込んでいく姿が描かれていく。

 

 ここで着目したいのが、背景に出てくる「窓」である。1つ目のコミュの冒頭からたびたび登場している「窓」は、「凛世の世界」と「プロデューサーの世界」、そして彼らと「外の世界」を隔てている、「境界線」を視覚化する機能をもつのではないかと私は解釈している。

 『知らぬ顔』において、凛世を含む高校生たちの会話を、離れたところからプロデューサーが観察する場面や、続く『芽ぐむ頃』において、凛世が「知らぬ顔」を見せるプロデューサーをただ見つめることしかできない場面では、互いが「見る」「見られる」だけの関係になっていることを象徴するかのように、「窓」が何度も背景に映りこむ。

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▲『知らぬ顔』より

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▲『芽ぐむ頃』より

 すなわち、【ロー・ポジション】における「窓」とは、世界と世界を隔て、互いの干渉を一切拒絶してしまう排他的な「境界」なのである。

 

 しかしながら、唯一この窓という境界を超え、向こう側の世界に入り込めるものが存在する。それが「光」である。

 「春雪」では、プロデューサーが寮という「凛世の世界」を象徴した空間に入り込むと同時に、窓からまっしろな朝日が差し込んでくる。

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 ここでいう「光」とは、「境界の外にいる相手を想い、愛する感情」や、それに付随して自発的にとる「相手のための行動」を意味する。

 先ほどのコミュ「芽ぐむ頃」において、取引先にお酌を強要される凛世を守ろうとプロデューサーが声をあげた瞬間、真っ暗だった背景にパッと電灯の光が灯る演出も、プロデューサーの「光」が凛世の心に届いたことを示しているのではないだろうか。

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 『芽ぐむ頃』では、プロデューサーが社会の圧に押されながら、なんとか凛世を守ろうと灯した小さな「光」だったが、『春雪』では完全に第三者が存在しない二人だけの世界が描かれ、プロデューサーだけでなく、凛世もまた「味噌汁を用意して待つ」という行為によって相手の世界に「光」を送る。

 その眩しい光はやがて別々だった二人の世界の境界を見えなくしていき、一つの大きな「明るい部屋」が生まれる。

 そしてそのようにして互いが送り合う、あまりにも大きく尊い光は、相手の世界や心だけでなく、「天」という「第3の世界」をも照らし、まっしろに染め上げていく。

 そんな春の奇跡を描いたのが『春雪』というコミュなのであろう。

 

4、濡れて参ろう

 続く4つ目のコミュでは、「春雪」で描かれたような、暖かい光に満ちた凛世とプロデューサー二人だけの「内の世界」の対比として、「外の世界」の存在が印象的に描かれている。

 

 ここでは、冒頭の雨が降りしきる薄暗い空の描写や、凛世の読む小説の「血で血を洗う倒幕運動」の時代背景など、「外の世界」が個人の想いではどうにもならないほど冷たく恐ろしく暗い世界であるということが強調される。

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 また、これまでを振り返ってみても、「親のメッセージをウザがる学生たち」「夜の酒の席でお酌を強要する取引先」「息も凍るほど冷たく真っ暗な早朝」のように、【ロー・ポジション】において「外の世界」(=社会)は決して明るく幸せなものとしては描かれていない。

 『芽ぐむ頃』の後半で見たように、そんな「外の世界」に怯え、一歩離れたところから「窓」を通して眺めることしかできない(=大人になりきれない)存在が凛世であり、プロデューサーなのである。

 

 一方、凛世とプロデューサーのいる「内の世界」に着目してみたい。「濡れて参ろう」で描かれる、突然雨に降られて大事な仕事の案件を確認できない状態(=プロデューサーという肩書きを失った状態)にあるプロデューサーのそわそわと落ち着かない姿や、『今月のイチオシ小説コーナー』にある時代小説を読む凛世の姿は、1、2つ目のコミュで描かれたのと同様に、互いの「知らぬ顔」だと言えるだろう。

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 ただしこれまでと大きく違うのは、互いの間に隔たりとして存在していた「窓」が無くなり、積極的に相手の領域に踏み込む姿が描かれていることである。

 凛世はプロデューサーの落ち着かない様子にすぐ気がつくと、雨の中でも車に戻ろうと提案し、反対にプロデューサーは凛世を気遣って雨宿りを続けると同時に、彼女の読む本(=凛世の内的世界)に興味を示してそのあらすじを尋ねる。

 

 もはやこの場に「凛世の世界」と「プロデューサーの世界」の間を遮る境界は無く、二人の世界は一つの「あたたかい軒下」として一つに交わったことが改めてうかがえる。

 

 

 そんな「内」と「外」の対比があった一方で、本コミュの後半からは、二人のもっていた「外の世界」への恐怖や不安が薄らいでいく姿も描かれている。

 二人は「大事な人が斬ったり斬られたりする」世の中に理不尽さや悲しみを感じつつも、たとえそのような時代に生まれていたとしても再びめぐり会い、「凛世を守る仕事に就きたい」「プロデューサーの代わりにいっそ自分が斬られよう」と互いを守ることを宣言し合う。

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▲えんだああああああああいやあああああああ

 そうやって心を通わせるうちに、得体の知れない恐怖を帯びていたような「外の世界」に対して、「大丈夫」「春雨です」と明るい表情を見せるようになる。『春雪』において「ふつと力が湧いてくるまっしろな時間」という表現があったが、まさに互いの存在が、外に一歩踏み出すための勇気を与えているのである。

 そして最後に凛世は「濡れても構わない」「春雨じゃ 濡れて参ろう」「濡れてまいりましょう」という、「内の世界」の殻を破り「外の世界」を目指す決意を垣間見せる。

 その心境の変化に呼応するように、これまで暗く雨が降りしきっていた空から、大きな窓を通して光が差し込んでくる。

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 まとめると、一人ひとりでは「大人」になりきれなかった二人が「あたたかい軒先」という空間を共有しあい、隣に並び立つことで、少しずつ芽ぐんでいくような兆しを感じさせる物語がここで描かれているといえよう。

 

5、TRUE END「木に花咲き」

 そして最後にTRUE ENDで描かれるのが、「光」を届け合い、背中を優しく押し合うことで「外の世界」との邂逅を果たす二人の姿である。

 

 冒頭、車でレッスン場へと移動中の二人は、「窓」の外にいる凛世の同級生を発見する。1つ目の「知らぬ顔」に近い状況ではあるが、今度は遠くから眺めるだけでなく、プロデューサーの方から自分の感じている「負い目」を打ち明け、凛世の世界に積極的に介入していこうとするのは特筆すべき変化である。

 

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▲Pが凛世の心に踏み込んだ瞬間、画面上下の黒帯(窓枠)が無くなる演出が入る

 

 ここでプロデューサーは、凛世から「女子高生・もりちゃん」として生きるという「当然の未来」を奪い、「アイドル・杜野凛世」として自分の世界に引き入れてしまったことを遠まわしに懺悔する。

 

 それに対し凛世は、ただプロデューサーの傍にいられることがただただ幸せで、そんな幸福という「光」が、「女子高生・もりちゃん」としての自分と、「アイドル・杜野凛世」としての間の境界(=窓)を取り払ってくれるのだと告げる。

 

 そしてそんな凛世の優しい言葉が、今度はプロデューサーの心をまっしろな光で覆い尽くす。

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▲天も心もまっしろな時間

 

 そして「プロデューサーとしての自分」と「プロデューサーではない素の自分」の境界が取り払われたプロデューサーは、凛世に対しクレープを食べに行こうと提案する。

 『知らぬ顔』では「偶然」、『濡れて参ろう』では「雨」という外的要因によって強制的に露わにすることになった「プロデューサーではない姿」を、今度は凛世の言葉によって感化され、自発的に見せているのである。

 

 先ほどのコミュ「濡れて参ろう」で見られた変化と同様に、二人の世界が互いに送り合う「光」は、ふつと湧いてくるような力を与え、「外の世界」への不安が無意識に生み出す「境界」をも無くしていく。

 これまで「光」しか通さなかった「窓」のイメージが、「風」や「音」も行き交うことができる「金網」へと変している光景がそれを端的に表しているのではないだろうか。

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「窓」から「金網」への変化

 プロデューサーの提案を聞いた凛世が「やばい」という、1つ目のコミュで「外の世界」の象徴のように使われていた語彙で反応するのも、凛世という人間と「外の世界」との境界が、この瞬間失われたことを示唆している。

 

 そして最後に二人は車という閉じられた世界から降り、「窓」を通すことのない眩しく美しい空模様が映って終わる光景は、二人の中にこれまであった世界の「境界」がなくなる、すなわち子供だった二人が「芽ぶく頃」を超え、「木に花咲き」つつあることを示しているはずである。

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6、 「ロー・ポジション」が持つ意味

 さて、ここまで物語を一通り振り返ってきたところで、今回のタイトルである「ロー・ポジション」が持つ意味についても考察してみたい。

 そもそも「ロー・ポジション」とは、主にカメラ撮影の際に用いられる用語で、一般的な人間の目線よりも低く、地面から近い位置でシャッターを切ることで臨場感を生む手法を指すようである。

 

 ちなみに、【ロー・ポジション】の約10日後に実装されたばかりの櫻木真乃PSSR【花風Smiley】の『カメラレッスン』には、こんなやりとりがある。

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 写真を上手く撮れないことを思い悩む真乃に対し、プロデューサーが『目線を意識してみる』ことを助言する場面の台詞だが、まさに「ロー・ポジション」で撮影した際の効果について語られているのである。

 「写ってる景色が大きく壮大に見えたり」「こびとになったみたいな気が」するとここでは説明されているが、カメラを通して見た対象物が実際のサイズ以上に大きく、迫力が増して見えるのが「ロー・ポジション」という手法の特徴といえよう。

 

 そして、長年シャニマスをプレイしてきた読者の皆様ならお分かりいただけると思うが、「カメラ」といえば、これまでの杜野凛世のコミュに頻繁に登場してきた要素の一つである。前回のPSSR【われにかへれ】において、プロデューサーとの幸せな時間を形にして残しておきたい凛世と、自身の姿をアイドルの携帯に残しておきたくないプロデューサーのすれ違いが、凛世の心を深く傷つけたことも印象的である。

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▲【われにかへれ】『夏雲だけを覚えてゐる』より

 ある意味カメラとは、凛世が自身の外側にある世界を観察し、あらゆる対象と向き合うための「目」としての機能を持ったアイテムなのである。

 

 今回のコミュで、凛世とプロデューサーが怯えていた、あまりにも大きく恐ろしい「窓」の向こうに広がる世界のイメージは、「ロー・ポジション」という撮影手法を取ることによって、自身がまるで小人になったかと思うほどの存在感を得た被写体のイメージと繋がる。

 「外の世界」が恐ろしく見えるのは、カメラのレンズという名の小さな「窓」から覗くことで実際以上に巨大に映るためであり、一度「窓」という境界を取り払ってしまえば、何ら恐れることはない等身大の世界である。凛世とプロデューサーの二人が、互いに隣同士にいることでその事実に気づき、「窓」ではなく自らのありのままの目で外へ踏み出す、という変化がこのコミュの主題なのである。

 

 やや先ほどの繰り返しになるが、この変化が最もわかりやすく示されたのが、4つ目のコミュ『濡れて参ろう』であろう。「雨も冷たいから、ここにいよう」と怯えていた冒頭から、後半からは「こんな雨くらいで往生してるの、ちょっと恥ずかしいな」「大丈夫…… 春雨です…… 濡れて……まいりましょう……」と強気になったり、時代小説の中の男女に待ち受ける(悲しい)未来を「知らなくてかまいません」と言い放ったりと、世界に対する恐怖は二人から無くなっていることが読み取れる。

 この心境の変化は、たとえこの先どんな悲しく辛い現実が待ち受けていようとも、「プロデューサーと一緒なら(凛世と一緒なら)乗り越えられる」、そう二人が思えるようになったことの表れであろう。

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 このように、タイトルの「ロー・ポジション」には、レンズ(=「窓」)から覗いた世界と、「窓」を外してありのまま見つめた世界のギャップを示唆する意味が込められていたのではないだろうか。

 

第2章 世界はそれを「愛」と呼ぶのか

 ここまで【ロー・ポジション】では、凛世とプロデューサーが互いの境界線を超え、距離が縮まっていく変化が描かれていると私自身述べてきたように、今回のコミュを通して、凛世の秘めた恋が一つ成就に近づいたと喜ぶ声もネット上では多く見かける。

 確かに、実質「告白」のようにも取れる台詞も多く出てきて、作品世界に浸っていると思わず内なる「をとめ心」がときめいてしまう本作だが、ここであえて冷静になって、今回のコミュで描かれたのが、男女の恋愛的な意味での「愛」だったのか考えてみたいと思う。

 

 結論から述べると、これまで私が書いてきたブログ記事を読んでくださった方にはすでにおわかりだろうが、今回も恋愛的な意味で二人の距離は縮まっていない、と主張したいのである。(別に特殊な性癖を持っているわけではないのですが、今のところ私は「凛世の恋は成就しない論」の提唱者なので、こういった論調を不快に思われる方はブラウザバックを推奨いたします……)

 

 GRAD編の考察時に、杜野凛世からプロデューサーに対して抱く感情は、ほかのアイドルとは逆に、男女の恋愛的な意味での「愛」から、人間としての「信頼」へと変わっていくだろうと考察したが、今回のコミュはその推測に近い答えが少しだけ提示されたように私には思える。

 

 そもそも凛世がプロデューサーが惚れ込んだきっかけを振り返ると、自分よりも「大人」で、広い未知の世界へと導いてくれる異性に、街中で偶然声をかけられたことである(詳しくは、本ブログのGRAD編考察記事の第3章を見ていただきたい)。

 WING編冒頭『運命の出会い』で、鼻緒が切れて困っている凛世を颯爽と助けてあげたのち、「最高の舞台に連れていってみせる」と宣言するプロデューサーに対して、凛世が「これからは一生、貴方さまに、ついて参ります」と返事していることからもわかるが、凛世のなかに恋愛感情が芽生えた根幹には、「プロデューサー=主、凛世=従」という関係性が前提にあったように思われる。

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▲一生に一度でいいから言われてみたい台詞

 

 一方、今回の『濡れて参ろう』における以下のやりとりは、二人の関係性や想いが確実に変化しつつあることを示唆している。

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 「たとえ戦乱の世の中に生まれても、凛世を守ろう」と宣言するプロデューサーに対し、凛世は「ありがとう」や「嬉しい」といった受け身の言葉ではなく、「(プロデューサーが命がけで戦うくらいなら)いっそ自分が斬られてまいります」と本心から応える。凛世はこのとき、そのほうが「その方が……よほどあたたかです……」と続けているが、もはや出会ったばかりの頃のように、プロデューサーが守り、凛世が守られるという関係性は終わり、二人が隣に並んで歩いていける存在になったことがこのやりとりから伺える。

 

 さらに言えば、このあと「(外には出ず)もうちょっと待ってようか」と提案するのが凛世ではなくプロデューサーの方であったり、『芽ぐむ頃』の「(凛世が大人になるのは)俺より先かもしれない」という言葉から察するに、むしろ凛世が導く側の「主」に逆転しつつあると言っても過言ではないのかもしれない。

 凛世はGRAD編を一つの転換点として、ただ導かれるだけの存在から、「濡れてもかまわない」(=外の世界に出て行きたい)という自発的な欲が確実に芽生えるようになってきている。一方で、その欲をすぐに実行に移すまでには至っておらず、まだしばらくの間は、プロデューサーに「守ってもらう」ことを心地よく受け入れている状態と言えるだろう。

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 もちろん、ここまで凛世の心境を変えたのは、プロデューサーのおかげであることは言うまでもないが、ここでの「ん?」という発言を見るに、プロデューサー側は凛世のこの変化に真に気づいてはいないのではないだろうか。あくまで予測なうえに、少し穿った見方にはなってしまうが、これまで凛世を成長に導いてきたプロデューサーの存在が、むしろこれからの凛世の「大人」への成長を妨げる可能性を示すエピソードが来てもおかしくないかもしれない……。

 

 また、今回本ブログにおいて特筆しておきたい描写が、『知らぬ顔』において出てきた「ケチャップのついた口元」である。

 以前、【われにかへれ】の考察記事の第2章で、「赤」は、凛世がプロデューサーのことを、仕事上のパートナーとしてではなく、一人の異性として強く意識する際に現れる色だと私は述べた。

 そして、直近の凛世のコミュでは、プロデューサーの前で凛世が口元を赤く染める描写があることも指摘したが、【十二月短篇】の口紅、【われにかへれ】のイチゴ味のかき氷に引き続き、今回の【ロー・ポジション】でも、ケチャップによって同じ描写が登場している。(これは自分でも正直かなり驚いた…)

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 しかしこれまでと決定的に異なるのは、凛世がプロデューサーにその「赤」を拭ってもらう描写があることである。

 「びっくりマークみたいに赤い」ケチャップをプロデューサー自身が拭うこの描写は、凛世がこれから「をとめ」的な恋愛感情から脱却し、「盲目」になる前のありのままの目で、プロデューサーと向き合っていくこれからの未来の示唆なのかもしれない。

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 もちろん、『明るい部屋』第2話での脳破壊描写が記憶に新しいように、まだまだ凛世の「をとめ」としての恋愛感情は消えたわけではない。また、仮に完全に恋愛感情から脱却したとしても、ベクトルが少し変わるだけで、プロデューサーへの想いの強さ自体は決して変わらないはずだ。異性や想い人の後ろについていくのではなく、共に支え合うかけがえのない人間同士として歩んで行く、祝福すべき成長といえるのは間違いない。

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▲問題の脳破壊シーン

 たとえどんな形であれ、凛世のこれからの未来が明るいものであることを祈りつつ、ひとまずこの考察を終えたいと思う。

 

おわりに

 ふぃ~。ここまで一万二千文字以上にわたって【ロー・ポジション】に自分なりの解釈を加えてきました。(執筆に2週間かかったうえに、図らずも過去最も長い記事になってしまいました……)

 ここまで読んでくださった方がいらっしゃるかはわかりませんが、もしいるとするなら最大級の感謝を示したいです。本当にありがとうございます!!

 

 偉そうにいろいろと語ってきましたが、解釈はもちろん人それぞれです。第2章は特に賛否両論ありそうだなーと思いつつ、夏葉さんもこうおっしゃっているように、そもそも「愛」や「恋」というものを、他人が語ること自体おこがましいのかもしれませんね……。

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 それにしても、今回の【ロー・ポジション】を読んで、シャニマスは本当にすごいゲームだと改めて感じました。「野球凛世かわいい~~!!」と直感だけで楽しめるのはもちろん、このように長い時間をかけて長文の怪文書を書くこともできる、素晴らしいコンテンツですね。

 新アイドルもどんどん加入し、賑やかになってきた『アイドルマスターシャイニーカラーズ』の未来に、これからも期待しております!!

 

全オタクたち、『シャニマス』をプレイして語彙力を鍛えよ!

 はじめに 

 あけましておめでとうございます。ツユモです。

 突然ですが、このブログを読んでいる皆さんは、「語彙力」なるものに自信がありますでしょうか?

 

 ■語彙力とは

 その人がもっている単語の知識と、それを使いこなす能力。「語彙力が高い」 

 (goo国語辞書より引用)

 

 ちなみに私は全く自信がありません。もう立派な社会人だというのに、子ども向け番組の会話にすら、ときどきわからない言葉がでてきて危機感を覚えるほどです……。

 

 先日、『魔進戦隊キラメイジャー』を見ていたときも、キラメイシルバーが使った「引責辞任」という言葉の意味がわからなくてしばらくポカーンとしていました……。

 

 引責辞任とは

 責任を自分の身に引き受けて、就いていた任務を自ら辞めること。例えば、不祥事の発覚した企業の経営者や政治家、成績の振るわなかったスポーツチームの監督が辞職するなど。

 (goo国語辞書より引用)

 

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▲このときの敵は「隕石邪面」。「隕石」と「引責」をかけたギャグだったんですねー…。

 

 もちろん、「語彙力なんかなくたって生きていけるわ!!」というロックな主張をする方もいらっしゃるでしょう。

 

 確かにそれも一理あるかもしれません。

 

 しかしそうは言っても、先ほど例に挙げたように、自分が観ている作品の中に、ふいに自分の頭の辞書に無い言葉が出てくるとなんだかモヤモヤしませんか…?

 動画を見ていて「え、今何て言った?」なんて思わず巻き戻してしまったり、すごく緊張感あるシーンなのに、「今の、どういう意味なんだろ?」と一瞬物語を離れて我に返ってしまったり、なんて経験がある方も多いのではないでしょうか?

 つまり、語彙力が高ければ、それだけ自身が愛する作品への没入度や理解度を高めることが可能になるのです。

 

 また、「語彙力」は日常生活で他者とコミュニケーションを円滑にとるための要でもあります。語彙が弱い、すなわち、言い換えや表現の幅が狭いと、自分の思っていることや考えていることを正確に言語化できず、思わぬ誤解を招いてしまったり、最悪の場合、言葉を知らなかったが故に詐欺の被害にあってしまうなんてことも…。

 

 

「マズい! 今すぐ語彙力を鍛えなければ!!!」

 

はい、なんだかそんな気持ちになってきましたね? これがメンタリズムです。

 

 ■メンタリズムとは

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 ▲goo国語辞書から引用できませんでした…

 

 

 しかしここまで煽っておいてなんですが、語彙力なんてものは、一朝一夕に鍛えられるような、単純な能力ではございません。

 

 本気で習得するとなると、とてつもない時間を要するだけでなく、貴重なお金や時間をかけて、新聞とか、高尚な文学とか、こんな感じの本↓を読まなくてはなりません…。

www.amazon.co.jp

 

 

 

うーん…。

 

こんなとき、なにか①無料で、②面白い物語を楽しみながら言葉を学べて、できれば③美少女がたくさん出てくコンテンツでもあったら、語彙力が鍛えられるんだけどな~!!!

 

あ~!!

 

あったらいいなあああああ!!

 

 

 

 

 

 

…ん?

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ま、まさか…!?

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こ、これは!!

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バンダイナムコエンターテインメントから絶賛リリース中の、基本無料スマホアプリゲームアイドルマスターシャイニーカラーズ』ではありませんか!!!!!

 

 

 

…はい。

 

というわけで今回は、語彙力の無さだけは浅倉透さんと肩を並べるシャニマスオタクの私が、プレイ中に「わからん」ってなった言葉を集めて、調べて、淡々と紹介していくだけの地味な記事です。

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▲美少女にしか許されない圧倒的表現力

 

「たかがソシャゲ」と侮るなかれ。

 繊細な文章表現とキャラクター造形によって数多くのオタクたちから高い評価を受けている『シャニマス』には、シナリオライターの深い教養を感じさせる文章表現が多数散りばめられているのです…!

 

 そしてなにより、「アイドル」という題材が語彙力を高めるのに非常に有用です! 

 アイドルとして活躍するキラキラした青春真っ盛りの美少女たちの世界には、我々オタクが生きる灰色の文化圏には存在しない言葉や知識が溢れています。

 

 アニメやドラマの場合、言語情報がすべて音として消費されてしまうため、知らない言葉が出てきてもついつい聞き流してしまいがちですが、テキストベースのソシャゲであれば、スクショしてあとから調べなおすことが容易に可能です。

 

 活字を読むのが苦手、という方も、『シャニマス』では状況説明のためのややこしい地の文がほぼ存在せず、テキストがキャラクター同士の会話や心情描写ばかりなので、サクサク読み進めることができるでしょう。

 

 こんなに語彙力を鍛えるのに適したコンテンツがかつてあったでしょうか。いや、ない。(反語)

 

 はい、そろそろ御託を並べるのがきつくなってきましたので、早速バンバン知識を磨いていきましょう!!(言葉の意味は、特に記載の無いものに関しては『goo国語辞書』より引用しております)

 
 【1】一般語彙編

■エクトプラズム【ectoplasm】 とは

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 心霊科学で、霊媒の身体から発出すると仮想される物質。

 簡単に言うと、アニメとかで気絶したキャラの口から出る魂みたいなの↓を「エクトプラズム」と言うらしいです。

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■俠客とは

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 義侠・任侠を建て前として世渡りする人。町奴 (まちやっこ) ・博徒 (ばくと) など。男伊達 (おとこだて) 。侠者。

  うーん、さすが凛世さん…。語彙レベルが高すぎて、辞書の解説を読んでもよくわかりません…。「pixiv大百科」によると、単なる「ヤクザ者」や「無法者」ではなく、「弱気を助け、強きを挫く」事を信条にして任侠に生きる漢たちの呼び名、との記載もあります。

 

■眷属(けんぞく)とは

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 1 血筋のつながっている者。一族の者。身内の者。親族。

 2 従者。家来。配下の者。

 これは、「一般語彙」なのか…? 厨二病感あふれるかっこいい言葉ですね。

 

シュラフとは

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 寝袋。スリーピングバッグ。シュラーフ。

 ドイツ語の”schlafsack”が語源のようです。

 

■上首尾とは

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 [名・形動]物事がうまい具合に運ぶこと。都合よくいってよい結果を得ること。また、そのさま。「話し合いは上首尾に終わる」「結果は上首尾だ」⇔不首尾。

 上の画像、咲耶さんらしさが凝縮された一枚ですね…

 

■スプリント【sprint】 とは

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 1 短距離を全力で力走あるいは力泳すること。

 2 陸上・水上競技やスピードスケートなどで、短距離競走。

 3 自転車競技の一種。二人の選手がトラックを2周または3周して着順を競うもの。最後の200メートルに至るまでの作戦とその後のスピードで勝敗が決まる。

 ここでは、1の意味で使われています。

 

■トーチ【torch】とは

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 「たいまつ」に同じ。 

 オリンピックの聖火リレーの際によく耳にする言葉です。

 

■額づく(ぬかずく・-づく)とは

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 [動カ五(四)]ひたいを地につけて拝礼する。ひたいが地につくほどに丁寧にお辞儀をする。「主の御前に―・く」

  夕方に花開き、翌日の昼にはしおれてしまう夕顔の姿を、「額づく」と表現した詩的な台詞です。ちなみに夕顔の花言葉「はかない恋」うぅわああああああ凛世ええええ!!

 

■フォトジェニック【photogenic】 とは

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 [形動]写真向きであるさま。写真うつりがよいさま。「フォトジェニックな顔だち」

 ありがちな「バエる」とかじゃなくて、この言葉をあえてチョイスするあたりが素晴らしいですね…

 

■落款(らっかん)とは

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 [名](スル)《落成の款識 (かんし) の意》書画が完成したとき、作者が署名し、または押印すること。また、その署名や印。

 これを真似できる天井社長、いったい何者なんだ…

 

【2】オシャレ語彙編

■バング【bang】、リタッチ【retouch】とは

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・バング【bang】

 額 (ひたい) の部分の垂れ髪。主に前髪についていうことが多い。その型や状態が、ヘアスタイル作りの大切なポイントとなる。バングス。 

 

・リタッチ【retouch】

 絵画や文章などに手を加えたり、化粧のくずれた部分や、毛染め後の新しく伸びてきた髪に色をのせたりして修正すること。「生え際にヘアカラーをリタッチする」

 作中でも三峰氏による解説があった言葉ですね。何もわかってなさそうな、こがたんのきょとん顔がかわいい。 

 

■スエード【suède】、フレア【flare】とは

f:id:shirazu41:20210101033908p:plainスエード【suède】

 子牛・子ヤギなどの裏皮を短くけばだたせた柔らかい皮革。手袋・ジャンパー・靴などに用いる。スウェード

 

・フレア【flare】

 スカートやコートなどの、洋服の裾の朝顔形の広がり。

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スウェードミニフレアスカート(参考)

 

 ■グルー(ネイルグルー)とは

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 ネイルチップを爪に装着する際に使用する、専用の接着剤。伸ばしている爪が割れたときの応急処置としても優秀なアイテム。(下の記事より引用)

www.kenkou-job.com

  優秀なアイドルプロデューサーになるためには、こういうオシャレ用語も当然のごとく知ってなきゃダメなんですね〜…

 

【3】長崎弁編

■ばってんとは

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 長崎弁で、「けれども」の意。

 きょうの長崎弁「ばってん」より引用。)

 こがたん会話の頻出語彙。よく覚えておきましょう。

 

■しょんどる(しょむ)とは

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 長崎弁で、「染みている」の意。

 (きょうの長崎弁「しょんどる」より引用。)

 

■せからしかとは

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 長崎弁で、「うっとうしい」の意。

 (きょうの長崎弁「せからしか」より引用。)

 

おわりに

 はい、いかがでしたでしょうか。

 ここで紹介したのはほんの一例ですので、皆さんもぜひプレイして自分の目で確かめてみてください。

 また、今回はあくまで、ゲーム内テキストとして出てきた言葉しか扱っていませんが、曲にまで目を向ければ、さらに勉強になること間違いなしです。特にアルストロメリアの歌詞は知らない単語のオンパレードですので、語彙力に自信がある方は調べてみてください。

 

 そんな『シャニマス』ですが、なんと今なら、過去のイベントコミュが無料で読み放題キャンペーン中!!!(2021年1月12日11:59まで)

 ぜひ皆さんも、お正月は『シャニマス』を読んで、語彙力を鍛えまくりましょう!

 

 それでは、私はもぎたて♡にーちゅ」の意味を探りに、アマゾンの奥地へと旅立ちますね!!!

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『【われにかへれ】杜野凛世』が描く青春の儚さと尊さに、奥歯が消滅したオタクの怪文書

はじめに

 どうも、ツユモです。

 気づけばもう8月も中旬。少しずつ夏が歳をとっていくのが感じられる今日この頃ですね。

 こんな短夜の夏は、少しだけ切ない気持ちになれる、美しい物語に浸りたい気分になりませんか? そんな皆様にオススメの作品があります。

 それはこちらの、アイドル育成ゲームアイドルマスターシャイニーカラーズ』(通称:シャニマス)に登場する、杜野凛世さんのPSSRカード【われにかへれ】でございます!!!

 

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▲世界の名画かな?

 というわけで、今回は昨年12月以来の登場となる、全世界待望の凛世5周目PSSRコミュについて、感想と考察を綴っていきたいと思います。

 

 ていうか、もうコミュとか物語以前に、水着凛世とギャル凛世のイラストが素晴らしすぎて、絵を眺めてるだけで「凛世…(恍惚)」という言葉にならない多幸感で頭と心が満たされてしまい、全く文章が書けなくなってしまいますね…。 ちょっと最後まで書けるか心配ですが、頑張っていきます! 画面の前のみんなは、ミラクルライトを振って応援してください!

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▲顔とコミュが良すぎる女

 そして前回同様、ここからは唐突に「ですます調」をやめます!

 

 ※ちなみに前回書いた凛世GRAD編の考察記事はこちら。

shirazu41.hatenablog.com

 

 

 

第1章 儚きものと美しきもの

 まず内容整理のため、今回のコミュのあらすじを簡単にふり返っておきたい。

 

①夏雲だけを覚えてゐる

 ある夏の日、凛世とプロデューサーは、写真撮影の仕事のため海沿いの田舎町を訪れることに。二人きりの旅行という状況に心踊る凛世は、「うつつか確かめたくて」思わず、無人のバスの中でカメラのシャッターを切る。

 

②むらさき

 それぞれ異なる色のかき氷を食べた二人は、互いに鮮やかなシロップの色に染まった舌の色を確認して、微笑み合う。そんな凛世の、夏らしい姿を写真に残しておこうとプロデューサーは提案。同じく凛世も、自分の携帯にプロデューサーの写真を残そうとするが、アイドルの携帯にそんな写真を入れるわけにはいかない、と断られてしまう。

 

③こもれ 日

 土産もの屋を訪れた二人。そこで放クラや寮の皆に加え、プロデューサーにもお土産を贈ろうとした凛世だったが、プロデューサーは気を遣い、「そんなのいいから、そのぶん他の誰かに渡してくれ」と断る。プロデューサーの発言に傷ついた凛世は、宿の部屋に一人籠り、不貞寝してしまう。

 

④月があたらしい

 凛世の写真撮影が無事終了。彼女の気持ちを無視した発言をしてしまったことを謝罪したプロデューサーは、凛世にもっと自分の欲を声に出して、我がままになってほしいという想いを改めて伝える。そのまま凛世の提案のもと、蛍を見に沼に向かった二人は、その幻想的な美しさに息を呑むのだった。

 

 ※さらにこのあと、TRUE END「われにかへる」が続くが、いったんここでは割愛させていただく。

 

 「月があたらしい」に顕著なように、本作は今年の5月に実装されたばかりのGRAD編を強く意識した内容となっている。GRAD編における凛世の成長が「自分の欲を出すこと」だったと解釈するならば、本作のコミュで一つのテーマになっているのは、「終わりを受け入れること」ではないだろうか。

 

 特に前半部分において印象的に描かれているのは、「今ここにしかない輝き」をなんとか保存しようとする凛世の姿である。

 二人きりのバスの車内や、かき氷を食べたあとに舌を見せるプロデューサーの姿を写真に収めようとしたことも、一緒に旅に同行しているはずのプロデューサーにお土産を渡そうとしたことも、すべて二人で過ごした幸せな時間を、いつか無くなってしまうかもしれない「思い出」などという曖昧なものではなく、形あるものとして残そうとしたがゆえの行動である。

 本作でスポットの当たるアイテムが、雲、かき氷、蛍など、いずれも一瞬しか存在できない儚いものばかりで固められていることも、コミュ全体に漂う切なさや、夢のような脆さを強調する役目をもっている。

 

 また、序盤の凛世の「これがまことであることを確かめたくて、撮った」という発言は、Morningイベントのひとつに登場する「夢と知りせば、覚めざらましを」の歌を踏まえたものだと思われる。凛世にとって、プロデューサーとともに過ごす時間は、夢のように幸せだったからこそ、これがあの歌のように夢や幻などではないと教えてくれる、客観的で絶対的な物を求めずにはいられなかったのである。

 

 思い返せば今回のコミュに限らず、凛世は、普段から思い出の品を大切にし、できる限り留めておきたいという精神が強い少女として描かれていたようにも思える。【無敵の証!五紋章!】では、「みんなとの思い出の葉っぱが枯れてしまった」と嘆く果穂に、「押し花」にして保存することを提案したり、【五色 爆発!合宿 クライマックス】では、果穂とともに合宿中に撮った写真を眺め、合宿の終わりを寂しがる果穂に対して「果穂さんには、カメラがあります」と励ましたりもしている。

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尊い……

 ここまで言うとやや過剰になってしまうかもしれないが、個人的には、凛世の実家が呉服店であることが、「思い出を形に残すこと」「誰かと共有すること」を愛する彼女の人格形成に影響を与えた可能性は高いと推察している。着物とは、ほどけば布に戻る構造をした衣服であり、古くなっても捨てずに何度も再利用することを前提としている。和の心や昔ながらの知恵を重んじ、普段から和服を着て古風な世界を生きる凛世にとっては、それが物であっても思い出であっても、自分の好きなものがいつか無くなってしまうことや、漫然と消費されてしまうことに、人一倍もったいなさや悲しみを感じるとしてもおかしくはない。

 

 だからこそ、今回の旅で最愛のプロデューサーに、そうした自身が大切にしてきた想いが尽く否定された凛世は強くショックを受け、宿に籠ってしまったのである。(ちなみに、このときのコミュのタイトルが「木漏れ日」ではなく、あえて「こもれ 日」と平仮名で不自然に区切った表記になっているのは、凛世が部屋に「こもる」コミュの内容とかけた言葉遊びだと思われる。)

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▲こもりんぜ

 そんな凛世の考えに大きく影響を与えたのが、終盤の蛍を見に行く場面である。彼女は蛍の光が溢れる夢のような光景を前に、思わず駆け出し、そして「ーしい」と呟く。

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 自然に考えれば、ここで凛世が発したと思われる言葉は「美しい」であろう。一方で、この場面のコミュのタイトルが、「月があたらしい」であることも見逃せない。ここでの「あたらしい」が平仮名表記になっていることから、おそらくこれは現代語における「新しい」ではなく、古語における「可惜し(あたらし)」と解釈するのが適当だろう。この「あたらし」とは、もったいない、惜しいという意味を持った言葉である。

 「愛しい人と二人で、月夜に照らされた水面の中で蛍を眺める」という幻想的な瞬間を永遠に留めておくことができないのが「惜しい」という想いに加えて、そんな儚い一瞬だからこそ「美しい」という新たな想いが湧き上がり、その相反する想いが合わさった名状しがたい感情こそが、この短い「ーしい」に込められているのではないだろうか。

 もしくは、この「ーしい」という音は、凛世が自身の気持ちを明言することをためらったが故に漏れた、声にならない声だったのかもしれない。言語化するという行為もまた、一時の目に見えない気持ちを客観的に伝え、保存できるようにしてしまう行為だからである。あえて明瞭な言葉を発さないことには、消えゆくものをありのままに感じ取り、無理に表現して残そうとしない美しさが垣間見える。

 前回のコミュタイトルが「こもれ 日」(=太陽)だったのに対して、「月があたらしい」という対照的な表現になっていることも、彼女の心に起きた大きな転機を示唆しているようである。

 

 さらに、こうした心境の変化は、TRUE END「われにかへる」においても提示される。

 具体的には、凛世が宿や夏雲に向かって名残惜しそうにシャッターを切りながら、「さようなら……」と別れを告げたり、「夏雲も…覚えていて……くれましょうか……」と、被写体に向かって語りかける場面のことである。

 もともと、凛世にとって「写真を撮る」という行動には、2つの意味が込められていた。「消えゆくものを残しておきたい」という過去への固執と、「いま自分が置かれている状況が、夢かうつつか確かめたい」という現実への固執である。

 しかし、TRUE ENDにおいて宿や夏雲に語りかける凛世の姿からは、この幸福な時間が消えてしまうことを受け入れ、今しかできない「対話」という行為によって「今」を大事にしようとする想いが確かに感じられる。

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 コミュの冒頭では、プロデューサーとの大切な時間を「写真」や「お土産」という絶対確実なものにして残せないことに悲しみを感じていた凛世だが、最後にはむしろ、二人の時間を「思い出」や「記憶」といった、儚い、けれどだからこそ美しく尊いものにして心に留めておけることに愛おしさを感じている。もはやそんな凛世にとって、この状況が夢かうつつかなどといった客観的な事象などは意に介さない。最後の「覚えて……帰ります……たくさんのこと……」や「夏雲も…覚えていて……くれましょうか……」という台詞からも、単なる過去や現実に対する固執だけではなく、この先の未来を意識した、凛世の中の前向きな変化を感じ取ることができないだろうか。

 

第2章 夢の終わり

 第1章では、主に「ーしい」という台詞について、凛世の視点からいろいろと考察してみたが、あくまでこれは私個人の勝手な解釈に過ぎない。実際は「楽しい」かもしれないし、「嬉しい」かもしれないし、「悲しい」かもしれない。チエルアルコ風に言うなら、「凛世の気持ちは凛世にしかわからない」のである。

 そしてそれは、作中のプロデューサーにとっても同じである。今回の旅において、人の心に耳を傾けることの難しさを改めて突きつけられたプロデューサーの視点から見た「もどかしさ」を端的に示す意味でも、ここではあえて「ーしい」というぼかされた表現が用いられているのだろう。

 

 では果たして、プロデューサーが本当の意味で凛世の想いを理解し、受け入れ、彼女の恋が成就する時はいずれ訪れるのだろうか。

 残念ながら今回のコミュを読む限りでは、その答えはNOと言わざるをえない。むしろ、今回出てきた夏雲、かき氷、蛍と同様に、凛世自身の恋もまた、儚くて終わりが近いものという示唆が間接的に与えられたのだと私は解釈した。

 まず印象的なのは、「むらさき」というコミュにおいて、凛世とプロデューサーがかき氷を食べ、シロップの色に染まってしまった舌を確認し合うという場面である。それぞれ赤と青に染まった舌を見て、プロデューサーは何気なく「これ、混ざったら紫になるのかな?」と発言する。それに対し、凛世は「紫の舌は恐ろしい」と返す。

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 一般的な文学風に解釈するなら、「互いの舌の色が交わる」という表現には、官能的な意味が内包されていると読み解くこともできる。これから赤と青が混じること、すなわち凛世とプロデューサーが恋仲になる(もっというと、肉体関係をもつ)可能性を暗に否定した場面にも捉えられるが、シャニマスという全年齢向けの媒体でそこを議論しても仕方ないだろう。

 

 むしろここで注目したいのは、凛世の食べたかき氷の色が「赤」(=紅)であることだ。

 紅色といえば、前回のPSSRカード【十二月短篇】において、凛世がプロデューサーのことを想って購入した「カルメン」という名の口紅を思い出させる色である。

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▲【十二月短篇】冒頭

 【十二月短篇】では口紅、【われにかへれ】ではイチゴ味のかき氷という違いこそあるものの、口元を赤く染めた凛世が、プロデューサーに見せるという姿は大きく重なっている。舌を赤くした凛世が、アイドルという立場を一瞬忘れてプロデューサーの姿を自身の携帯に残そうとしていたことからも伺えるが、凛世がプロデューサーのことを、仕事相手としてではなく、一人の異性として強く意識したときに印象的に使われる色が「赤」なのではないだろうか。だとすると、「赤」とはアイドルではなく、「普通の恋する少女としての凛世」を象徴する色と言える。 

 一方で、プロデューサーが食べているかき氷の「青」とは、説明するまでもなく、凛世が放課後クライマックスガールズで活動するときのイメージカラーである。つまり、「アイドルとしての凛世」を象徴する色が「青」と言えるだろう。

 

 凛世はこの二つの色が混ざった「紫」に対して「恐ろしい」という表現を用いている。ここで思い出したいのが、WING編優勝後の以下の発言である。

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▲終わりんぜ

「凛世は驚きとともに、恐ろしさを感じました……

 失敗すれば、すべて終わってしまうのではないかと……」

 

 お化けや幽霊さえも恐れない凛世にとっての「恐ろしい」とは、今ある幸福が「終わってしまう」ことに対する漠然とした不安を表す感情なのである。

 凛世は、プロデューサーに対してどうしようもないほど大きな感情を抱きつつも、同時にアイドルとして多くの人の心を動かしたいという夢を抱いている。そんな今の状況があまりにも不安定で、永遠に続くものではないことに、無意識に気づきつつあるはずだ。

 その凛世自身に「紫は恐ろしい」と言わせ、「赤でやめておく」「青でやめておく」というやりとりをさせたこのシーンは、アイドルとしての夢と、少女としての願望が両立できるものではない(=今ある幸せはまもなく終わる)ことを示唆しているように思えてならない。

 

 また、今回のカードタイトルに使われている「我に帰る」=「興奮状態から醒め、平静の状態に戻る」や、ガシャ画面にも使われている「放っておいて……くださいませ……」という台詞もまた、凛世とプロデューサーの関係の終わりを予感させる。

 

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▲ガシャタイトルの「夏的平衡」も意味深である。

 今回のコミュでは、そんな儚い現実が示唆された一方で、忘れてはならないのが「儚く終わりがあるからこそ、美しくて素晴らしいのだ」という希望も確かに示されていることである。

 プロデューサーと凛世の想いが通じ合うことはないかもしれないが、いまこの瞬間「想いが聞こえたらいいのに」と互いに想いあう、美しく、尊く輝く二人の心の動きは確実に存在し、見る者の心を確実に惹きつける。

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 たとえその恋が「一夏の夢」だったとしても、決して価値のないものなどではない。凛世はやがて恋心から醒め、【われにかへる】のか、想いを伝えたのち失恋するのか、アイドルの道を諦めるのかはわからないが、今回のコミュで「終わり」を受け入れられるようになった凛世なら、どんな結末を迎えようとも、必ず乗り越え、自身の成長に変えていけるはずだ。

 

 シャニマスが「ソーシャルゲーム」という媒体である以上、これからどれだけ深く二人の関係性の変化が描かれるのか未知数ではあるが、私も一人のファンとして応援し、この物語を最後まで見届けたいと思う。

 

※6周目PSSR【ロー・ポジション】の考察記事はこちら。

shirazu41.hatenablog.com